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ネコの拾い方…
第4章 それは幻だったから…
しばらく沈黙が続く。
昌弘が気不味い表情をしながら、ゆっくりと息を吐き出し何かを決心したように口を開く。
「えーっと…、清太郎がトキってバレて…、やっぱり天才少年は清太郎の初恋な訳で…。」
「違うって言ってるだろ。」
「違わないと思うぞ。要するに俺らみたいな凡人がアイドルに熱を上げるのと同じだろ。」
「僕はアイドルに熱を上げたりしない。」
「そりゃ、清太郎は凡人と違うからな。その天才と比べるから凡人にされてるって感じだな。」
その通りだと思う。
僕は藤原の当主として特別な存在になれと言われ続けて来たのに、遼の前では通用しない。
その事実が僕のプライドを甚く傷付けた。
「それで、どうなった?」
「どうもしない。僕は先輩を突き飛ばし、くだらない言い掛かりは止めて欲しいとかそんな言い訳をしてその場から逃げ出してた。」
「あらら…。」
僕は遼から逃げる事ばかりを考えてた。
「なのに、先輩は毎日、僕の前に現れる。」
「へ?」
「やたらと一緒に食事をしようと言って僕のところに押し掛けて来るんだよ。」
呆れるしかなかった。
遼は平然と僕のマンションにまで押し掛けて来た挙句に勝手に
「合鍵貰うぞ。」
と僕の部屋の鍵まで作ってしまった。
「それって既に男と同棲経験がありますとカミングアウトしてんのか?」
昌弘が再び不機嫌になる。
「だから、違うと何度言わせる。大体、この話を始める前に昌弘には気分の悪い話になると言ってある。」
「わかった。どうせ俺が我慢して最後まで聞けばいいんだろ。」
乱暴に言葉を吐き捨てる昌弘に僕は戸惑う。
冷静に対応しなければと身体に染み付いた習性を感じるのに心がそれに着いて来ない。
別に我慢して欲しい訳じゃない。
「我慢して欲しい訳じゃない。僕は僕の全てを昌弘に理解して欲しいだけだ。」
僕が俯けば昌弘が僕の顔を上げてキスをする。