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ネコの拾い方…
第1章 寒い夜だったから…
人を支配した瞬間の優越感が堪らない。
今、僕は完全に昌弘を支配してる。
それを理解してる昌弘が情けない表情で懇願する。
「あまり激しいとイッちまう…。」
「どうして欲しい?」
「出来るだけゆっくりと…、無茶して清太郎の身体が傷付くのも嫌だし…。」
顔を真っ赤にする昌弘が俯く。
昌弘から僕には触れない。
触れさせない。
だから僕が昌弘を抱き締めて昌弘の額にキスをする。
飼い主は昌弘でネコは僕…。
それでも主導権は常に僕のもの…。
「ゆっくりだと僕が物足りない。」
そうやって、わざと我儘を押し付ける。
「だったら…、話の続きを聞かせろ。正直、叔父の登場でどうなったのかが気になってしゃあない。」
「どうもなってないよ。」
「なってないのか?」
「うん…。」
叔父は僕の為に昼ご飯を用意していた。
僕の中にはある種の期待があった。
本家の料理長が作った京懐石…。
暖簾分けした父との差を知りたい。
その期待は裏切られる。
「なんで?」
ゆっくりと動く僕の身体を抱える昌弘が聞いて来る。
「叔父が用意してくれたのはお子様ランチだったからさ。しかも、有り得ないほどに不味いものだった。」
「マジか…。」
そう…。
信じられないほど不味いお子様ランチにガッカリさせられた。
僕の表情を見た叔父は今にも消えそうで泣きそうな、そんな悲しげな顔をする。
「ごめんね…、不味いよね…。ごめんね…。」
呟くように同じ言葉を繰り返す叔父からは本家を継ぐのに必要だと言われるプライドや誇りなど全く感じない。
ただ、壊れたレコードプレーヤーのように叔父の言葉が何度も僕の周りで木霊する。
悲しげで頼りないだけの叔父に失望だけしか感じない冷めた5歳の子供がこの時の僕だった。