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ラブ・アンド・セックス
第2章 舞台の上でセックス!?
台本が配られた。タイトルは、『愛と悦び』とある。

まずは全員が黙読する。やがて早く読み終わった人から、驚きの声が上がった。

オレも、ひと通り目を通して、その内容に愕然とした。同時に、どうしてこの劇が実際の夫婦で演じられることになったのかわかった。

ラストのクライマックス、夫婦が互いへの愛情を取り戻し、それを確かめ合うためにベッドをともにするシーンがある。そのト書きに、「実際にセックスする」と書いてあるのだ。

オレは、信じられなかった。いくら何でも舞台の上で、観客が見ている前で、本当にセックスするなんてことがありうるのか!? 

麻衣も気づいたのだろう。隣で小さく叫び声を上げた。顔から血の気が引いている。

「先生、最後のページに、実際にセックスする、とありますが、これは何かの間違いではないでしょうか?」

恐る恐るオレは聞いてみた。

「いや、間違いじゃない。そこに書いてあるとおりだ」

先生は、眉一つ動かさなかった。

「そんな……」

「驚いたかね」

先生は、オレの顔をじっと見つめながら言った。

「夫婦の本質とは何か。それはセックスだ。セックスをすることを社会から正式に認められた男女の関係が夫婦であり、セックスを通して、夫婦は会話し、愛情を育み、子孫を残す。だから私は、この舞台で本物の夫婦による本物のセックスを見せることにしたんだ。

もちろん舞台は芸術であり、ポルノではない。法律もある。観客にそのままを直接見せることはできない。私は影絵の手法を使おうと思っている。スクリーンを使って、セックスしている姿をシルエットで見せるんだ。スクリーンの両脇に大きなモニターを置いて、演技をしている役者の顔を映し出せば、観客に十分、人間の営みの生々しさを伝えることができるだろう」

いかにもリアリズムを追求する相沢先生らしいアイデアだった。
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