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黄昏異変 肉欲の奈落
第1章 女医 早苗
「失礼。君のハンカチを汚しちゃったよ」
「ううん。いいの。浩二さんに使ってもらえて、わたしうれしい」
浩二は絶句した。
「早苗さん…」
あの時はたしかに早苗の色香に手が震えたのだ。
「君のうなじに見とれて震えた。不謹慎なおじさんだね」
「浩二さんが不謹慎なら、わたしも同じです。浩二さんの胸に抱かれて、わたしも震えるほどうれしかった」
「分かった。早苗さん、君が真剣だってことは分かったよ。でも、現実を見なさい。僕には妻子があるし、定年間近の男だ。三〇そこそこの君の恋の相手にはならないだろう」
「歳は関係ないわ。というより、わたし、年上が好きなの」
「年上にも程度があるだろう」
早苗は激しく頭を振った。
「ずっと上が好き」
早苗の言葉はますます熱を帯び、呼ぶ名もいつのまにか「浩二」に変わっていた。
早苗の気持が分かれば分かるほど、浩二の頭は煩悩で一杯に膨れ上がり、さも女に無関心を装ってはいても、次第に邪心が姿を現す。
浩二は早苗の視線を避け、あらぬ方に視線を転じた。
「妻というものは簡単に捨てられるものじゃない。君もご両親を思い出してご覧」
浩二は相手の出方を伺った。