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黄昏異変 肉欲の奈落
第1章 女医 早苗
 幸子が相槌を打つ。
 薄暗くなった公園のベンチに座る幸子の傍らに、その日は見かけない女性が一緒に座っていた。

 「娘なの」

 歩き出すと幸子がその若い女性を紹介してくれた。 

 「エッ、こちらがご自慢のお嬢さん」
 「はじめまして。早苗です。乾様のお噂はかねがね母から伺っております」
 「僕の噂・・・。坂根さん、やだなァ、何を話したの」
 「早苗、変なこと言うんじゃないわよ。乾さんが誤解するじゃない。二人の世間話をネ、ときどき娘に。ホホホホ」

 幸子は少しあわてた様子で笑って誤魔化した。
 浩二はいささか信じられない思いに駆られた。
 幸子さんも上品なご婦人だが、その娘がこんな美しい女性とは。

 (使用前使用後の違いか・・・)

 リリーのリードを引きながら、浩二は時折りチラリッと早苗の顔を盗み見た。
 うりざね顔、輪郭の濃い切れ長の眼、鼻筋はスーッと通って、唇の薄い端正な顔立ち。
 肌は白く、スタイルは抜群だが出るところは出て豊満な体つき。

 「今までどこに隠していたんですか、こんなお嬢さん」
 「京都よ。今度転勤で横浜に来たの」

 幸子は少しためらったあと、声を落として言葉を継いだ。

 「乾さん、誰かいい人いない」
 「お嬢さんはたしか女医さん・・・」

 女医の相手探しは、いささか敷居が高い。

 「いい人ねえ・・・」

 浩二にも幸子の気持ちはよく分るが、しかし、・・・・。

 「すぐになんて言わないわ」
 「お母さんやめなさい。そんな話」

 横で話を聞いていた早苗が、さも恐縮したように母の話を遮った。

 「ところで早苗さん、これからもたまにはご一緒できるのかな」
 「はい」
 「そりゃうれしいな。あなたのような美人と一緒に散歩できるなんて」

 浩二の胸にわけもなく期待が広がる。

 「何も出ませんよ。そんなにおだてても」
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