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黄昏異変 肉欲の奈落
第1章 女医 早苗
己の赤裸々な姿を浩二の前に晒し、早苗は頬を染めた。
「ありがとうございました」
それは早苗の秘められた淫欲、マゾとしての欲望を初めて満たしてくれた浩二への心からの感謝の言葉であった。
「よかった。何とかこれで、僕は役目を果せた」
浩二が長々と体を伸ばすと、その傍らに裸身を寄せた早苗が話し出した。
「女が何故エクスタシーで声を上げるか、ご存知」
「えっ、理由があるの」
「あるのよ。オスを呼ぶためなの」
「どういうこと?」
「エクスタシーが終わったメスは効率よく次のオスを受け入れられるから」
「そうなの」
「出来るだけ多くの精子を競わせて優秀な子孫を残すために、善がり声を上げて別のオスを呼ぶのよ」
「貞操とは無縁だね」
「人類はもともと乱婚なのよ」
「乱婚か」
「それに、音の漏れない密閉された空間で性行為をするようになったのは、長い人類の歴史の中では、ほんのわずかな期間。ごく最近のことでしょう」
「それって、大学の講義?」
「そう。先生の受け売り」
「講義が終わったところで、今日はお仕舞いかな」
「まだよ。・・・まだあるの、お話ししていないことが」
「まだ話していないこと。そうだった。ビデオの話の続きだね」
浩二は、なぜかその話の続きを聞きたくないと思っていた。
聞いてしまったら、抜け出せない肉欲の世界に迷い込みそうで怖かったのだ。
だが、早苗は許してくれなかった。
早苗の倒錯した性にとって、それはまだ入口でしかなかったのだ。