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純愛ハンター
第3章 裁き3、家族のような職場です
「うらあぁ~っ!開けろっ!出て来ぉいっ!」

事務所入り口から、ろれつの回らない女の叫び声と共にバンバン…!と鉄製のドアを乱暴に叩く音が事務所内に鳴り響いた。

「誰?まだ営業時間前なのに…」
「開けろぉっ!さっさと中に入れろってんだよ…この野郎っ!」

お嬢は慌てて2階の別室から飛び出すと、ドアの前まで急いだ。

「あの…まだ営業時間前なんですけど…キャッ!」

お嬢がドア越しに話しかけるや否や、相手は力任せにドアをガーン!と蹴り上げた。

「なんで時間通りに来て開いてねぇんだよ!」

たまらずお嬢がドアを開けると小柄で目鼻立ちのハッキリした長い黒髪の女が、赤のチェックのシャツと紫色のパンツというラフないでたちで、アルコール臭を漂わせながら立っていた。

「時間通りに開けろよぉ!」

女は完全に座った目付きで、お嬢のブラウスの胸ぐらに掴みかかった。

「あ、あのウチ…9時からなんですけど…」
「知ってるよそんなの!今何時だ!時間見てみろ時間をっ…」

お嬢は女に掴まれながらも苦しげに腕時計を見た。

「ま、まだ8時49分…ですけど…」
「お前らはゆとりかっ!モラトリアム真っ只中か!15分前行動は基本だろうが?私なんか守れなかったら“指導”だっての…」
「指導…?」
「知らないなら教えてやる!あんなぁ…」

焦点の合わない目で女が講釈を垂れようとすると、

「あのねぇ、ウチ…酔っぱらいはお断りなのよ」
「あっ!玲子…」

お嬢の背後から怪しい笑みを浮かべながら玲子が現れ、女を刺すような目線で捉えた。

「何だとぉ?この野郎…」

女はすかさず玲子に掴み掛かるが、玲子が軽やかに避けると女は足をもつれさせて床に倒れ込んだ。

「テメェ、客に何してんだよ…客は丁寧に扱うモンだって習わなかったのかよっ!」

玲子は侮蔑的な笑みを浮かべ、女を見降ろした。

「あとねぇ?イイ年こいてノーメークの女も…鼻にかかったキモい声でまくし立てる女もお断りなの…ゴメンね」

お嬢は乱れたブラウスの襟を直しながら、その様子をハラハラしながら見ていた。

「ぶっ殺すっ!舐めたツラしやがってぇ…こっちはもう人生終わったってイイんだからよっ!」

女は目にたっぷりの憎悪を湛えて立ち上がると、拳で殴りかかった。
だが女が何度殴りかかろうと、玲子はダンスしているかのように全て紙一重で避け続けた。
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