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純愛ハンター
第5章 裁き5、愛しい人よ
「嫌あぁぁぁ!譲っ…!譲ぉぉ~っ…!」

渡辺は目の前で起こった出来事を瞬時に咀嚼し切れず、胸に包丁が突き刺さり動かなくなっている四ツ倉を目の前に、そう声を上げて立ち尽くした…。

「あ、四ツ倉譲…たった今死にましたんで!」

微笑みながら歩み寄ってくるお嬢を、渡辺は睨み返しながら後ずさりした。

「どうして殺したの…?どうしてっ…!復讐したいとは言ったけど…そこまでするなんて聞いてない…」
「ウチは更生施設じゃないんです。分かってて依頼したんでしょ?渡辺さん、あなたも立派な共犯よ…ねっ?」

お嬢は顔をかしげてニッコリと微笑んだ。

「あなた達どうかしてる…こんなっ…こんな復讐屋なんかに頼むんじゃなかったぁぁぁ~っ!」

渡辺はお嬢の前から逃げるように走り去ると、『龍宮城』の外へと飛び出していった。
お嬢が天井の角に設置されている監視カメラを睨み上げると、即座にショートジャケットの中のスマホが震えた。着信画面には、

『玲子』

と表示されていた。

「もしもし…見てたんでしょ?ご覧のとおりよ…」

お嬢は電話に出ると、開口一番そう言った。

「お嬢…契約その4『契約に違反した場合“おじさま”の全組織力をもって社会復帰が不可能な状況に陥らせる』アンタ…知っててやってんだよね?」
「ま、そうね…知っててやったわ…」

玲子は事務所の別室の中で、モニター越しにお嬢を燃えさかる炎のような眼光で睨み返した。2人の間に電話越しの沈黙がしばし流れた。
『龍宮城』の外から聞こえるさざなみとカモメの鳴き声が、緊張感漂う沈黙と裏腹に緩やかな離れ小島の情緒を感じさせた。
その沈黙をお嬢が破った。

「…私なんでしょ?次の復讐の相手って…」
「どうしてそう思うんだ?」
「だって…それは…」

お嬢はしばし言葉に詰まるが、

「それは…玲子がいちばん良く知ってる事じゃない…?」

押し出すようにそう続けた。

「さぁ…分からないねぇ?なんで私がお嬢に復讐しなくちゃならないんだ?ハッキリと言葉にして言いなよ…」

再び長い沈黙が流れた。

「だって…それは…以前に…私が…」

お嬢がようやくそう弱々しく発すると、またもや一呼吸置いた。
そして「はぁっ」と大きく息を吸い込むと…
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