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純愛ハンター
第5章 裁き5、愛しい人よ
「………っ!」

いたたまれなくなった玲子は旧館を飛び出し、ボロボロと涙を流しながらカバンを置いてあった『本館』の喫茶室へ全速力で向かった。
丸子がお嬢と肉体関係を持っていたなんて…!
それがずっと続いていたのか今回だけの事だったのかは、玲子にとってどうでも良い事だった…。
付き合って間もない恋人と、未だ心のどこかで親友だと思っていたお嬢に裏切られた事実は、玲子の心を深く深くえぐった…。
…玲子がお嬢と丸子の痴態をタイミング良く目撃してしまったのは、四ツ倉の筋書きによるものだった。
お嬢が丸子を別館に呼び出して興奮作用のある薬物を混入させた飲み物を飲ませ、前後不覚に陥った丸子に玲子に嘘のメールを打たせたうえ、たやすく性的な行為に持ち込んだ所を玲子に目撃させたのだった。
丸子はその翌日、謎の理由で自主退学した。

だがこれは、ほんの序章に過ぎなかった。
いや、序章にも満たない予告編のようなものだったのだ…!

「無いっ…無い…!どうしよう…」

喫茶室に戻った玲子は、置いていたカバンが無くなっていた事に背筋を凍らせた。
カバンには全財産とカード類の全てが入った財布も鍵も定期券も入っており、このままでは自宅に入る事すら出来ない事実に玲子は右往左往した。
学生課に行って確認したが、カバンは届いていなかった。

「緑…」

玲子は脊髄反射的にお嬢に助けを求めようと思ったが、今ごろお嬢は丸子と旧館で愛し合っている訳であり…助けなど求められる筈もなかった。
どうする事も出来ずにトボトボ…と大学の敷地を出た玲子に突然、
ポツッ…ポツンッ…パタパタパタッ…ザアァァァァァァァ…!
スコールが襲いかかった。
玲子がスコールにつられて大粒の涙をこぼし、「うっ」と嗚咽しそうになった瞬間…

「あれ?君、確か2年の子だよね…?」
「あっ…うぅっ…はい…そうですけど…」
「どうしたの…?このままじゃずぶ濡れになっちゃうよ?それに…何か酷い顔してるけど…」

ある男子生徒がそう玲子に声をかけると、傘に入れてくれた。
その男は、大学院生の一ノ瀬裕だった…。
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