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復讐の味は甘い果実に似て
第1章 終わりと始まり
 そして、僕が恵梨に自分の抱える女性不信や浮気に対する嫌悪感を話せるようになったのは、付き合ってから、1カ月も経ってのことだった。

 母のことがトラウマになって、女性不信になっていること。
 絶対に、浮気や不倫が許せないこと。
 だから、これだけは約束してくれ、と僕は言った。
 もし、僕に飽きて浮気をするくらいなら、その前に別れてほしい。
 どんなに苦しくても、それは受け入れるから、と。

 そして、14歳の時から、始めて僕は自分に関するありとあらゆることを他人に話した。
 正直、恵梨にこういうことを話すのは、決して楽な作業ではなかった。
 だが、僕は記憶のあらゆる傷を、その痛みも含めて、ありのまま恵梨に告げた。

 僕の告白はたどたどしく、最後には嗚咽混じりの情けないものだったが、テーブル越しに恵梨は僕を抱きしめて、なだめるように言ってくれた。
「……大丈夫だよ。わたしは他の人に心を移したりしないから。心配しないで……」
 彼女の胸の中で僕は止めどなく涙を流しながら、ひたすらに彼女を抱きしめていた。 

 そして、僕はベッドの上で必死に彼女を求めながら、生まれて初めて、家族以外の誰かと一緒に生きていきたいと願った。
 多分、恵梨と結婚、ということを意識したのは、この時だったと思う。

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