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復讐の味は甘い果実に似て
第10章 それぞれの朝
 こうして、僕の復讐は終わった。
 振り上げた拳をまともに降ろすこともできない、だらしない復讐だったけど、そういう僕を救ってくれたのは、本来、僕の復讐に巻き込まれた被害者であるはずの、ひかると明日香だった。

 先生が言ったように、人生というものが一本の線だと仮定するなら、僕と彼女たちは、およそ考え得る限り、最悪の形で交わった。
 彼女たちが僕と人生を交えたことでどうなったか、実際のところは彼女たちに聞かないとわからないけれども、少なくとも、僕自身は、彼女たちによって救われた。

 恵梨の裏切りという絶望の淵で、僕が求めたのは彼女たちの温もりだった。
 僕は、彼女たちに溺れることで、自分を苦しめてきた母の呪縛からどうにか逃れることができた。
 もし、彼女たちが僕の前に現れなければ、僕は死ぬまで女性という存在を、信じもせず、愛することもない人間になっていただろう。

 そして、運命は、僕にひかるという未来を残してくれた。

 次にひかるに会う時、僕は間違いなく、彼女に恋い焦がれているだろう。

 多分、僕は彼女の好きなラズベリーのタルトとスターチスの花束を買って、顔を赤くしながら彼女に告白するだろう。

 ひかるは僕に、微笑みかけてくれるだろうか。
 僕を抱きしめて、息もできないくらい長くキスしてくれるだろうか。
 
 発車のベルが鳴り、列車が動き出した。
 列車が駅のホームからゆっくりと滑り出し、ビル街の中を進んでいく。
 僕は、列車の窓から、忙しそうに行きかう人の流れを見ながら、これからの生活と人生に想いを馳せ続けていた。





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