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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第2章 小鹿大樹
「ははは、つまらねえか?」
「あ、いや、そうでもないですが」
「いいんだよ、正直に言えば。こんなチンポなんか有りはしねえ。表情もみんな同じで、こんなんじゃ、チンポは立たねえってお前の顔に書いてある」

図星だ。

「まあ、今もそうだが、お江戸の昔だって、お上の取り締まりが厳しいからだよ」
「昔も同じですか?」
「ははは、お上はいつの世も厳しいんだ。それに日本画は徹底した模写で腕を磨くから、細部まで描く技量は確かなんだが、自由な発想が無い、そういうことが原因だと俺は思っている」
「なるほど…」

有田が感心していると、小鹿は別の画集を取り出した。

「だけどな、江戸末期になると、西洋画法を学んだ奴が出てきてな、ほら、歌川国芳だ。こいつはいい絵を描いてんだよ」

開いた画集には今まで見てきた春画と違って、全裸の男女が布団の上で絡みあっている、感情豊かな顔、見ているだけでペニスがむずむずする絵が出てきた。

「へえ、こいつは素晴らしい…なんていうか、江戸時代版エロ写真、名付ければ『これがお江戸のセックスだ』ってとこですか」
「お前、うまいことを言うな」
「へへへ」

有田の反応に、小鹿は満足そうな笑顔でお茶をゴクンと飲み干した。

「それから、これは枕絵といって、侍だとか金持ちの家の娘が嫁に行く時に持たせた、言わば、昔の性の教科書だ」
「これですか…」

次から次へと出てくる貴重なコレクションに、有田は呆れるより感心していた。
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