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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第2章 小鹿大樹
≪よろしくお願いします≫

「昨日はご苦労さん」

有田はママのダンナ、小鹿大樹から呼び出されていた。

「あ、いえ」

豊島区池袋にある50坪ほどの一軒家。ここが彼の本当の住まいなのかは分らぬが、今日は女の影はない。

「緊張するなよ。俺はお前が心配するようなヤクザでもなんでもない。この間言った通り、ただの骨董屋のオヤジだ」

そう言われれば、和服姿、それに玄関にも、この応接間にも、それらしきものがさりげなく置かれている。

「親父からもらった遺産で道楽して暮らす身分だから安心しろ」
「はあ、まあ、そうですか…」
「俺もお前と同じ、女好き。今は、糖尿の影響で、チンチンはすっかりダメになってしまったが、仲間を集めて、昨日みたいな遊びをやっているだけだ」
「はあ」

有田は出されたお茶を一口啜ったが、いったい今日は何の話なんだ…と落ち着かず、少しも旨くない。そんな心境を見透かしているように、小鹿はニヤっと笑うと、話を続けた。

「お前、春画って知ってるか?」
「あの歌麿とか…」
「そうだ。あのでっかいチンチンなんかを描いた浮世絵のことだ」
「ああ、それなら私も知っていますよ」
「そうか」

ふふっといやらしい笑いを浮かべた小鹿は黒塗りの書類箱から紙袋に入った古い画集を取り出した。

「これが春画だ」
「はあ、そうですね」

インターネットで見たのと同じ、男女の下半身の絡む浮世絵だが、現在のエロ写真とは違って、裸ではなく、着物のまま、表情も乏しい。

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