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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第5章 銀行との取引も、「男と女」も、決め手は「好き・嫌い」
「それから、『子供が生まれるって言ってたから、お祝いにあの壺をあげようと思っているんです』、これまたウソをついたの。すると、吉田さんは顔色が変って、『いや、是非、あの壺を私に』って。それで、『そこまで仰るなら、この壺は譲りましょう。でも、あいつにも花を持たせて下さい』、例の取引のことを伝えたの」
「だけど、それだけじゃ、吉田さんは取引してくれないでしょう?」
「だから、河口さんなのよ。『なんだ、有田君はそんなことで困っているのか。じゃあ、学園の口座を彼に任せよう』って、エロ坊主は口が達者だから。吉田さんもそれに煽られ、『うちも有田君に任せよう』ってなったんだって。まあ、その他、いろいろあってね。それより、吉田さんは有田ちゃんが気に入ってたんだって」
「えっ、吉田さんが私を…」
「ついでに言うけど、嫌いなのは榎本課長だって。『あいつは〝必要なのは金だ〟って顔ですよ。どうも、好きになれない』って」
有田は思わず「分かる、分かる、その気持ち!」と手を叩いていた。
「バカ!榎本さんは上司でしょう。そんなことだから、叱られるのよ」
「すみませんねえ。バカで」
「分かっているじゃない」
「ははは。そうです。ははは」
大笑いした有田はベッドから飛び起きると、その場で体操を始めた。
「な、何をしているの?」
「あ、いや、準備体操。二回戦の。へへへ」
「もう、全く」
「バカですか?」
「いいえ、いい人よ」
「じゃあ、いきますか?」
「どうぞ…あ、いきなり…」
ベッドから枕が蹴り出され、ギシギシと大きな音を立ててきしみ始めた。
翌朝、有田が銀行に遅刻したのは言うまでもない。