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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第6章 エロ芝居?それはないぜ
≪秘密兵器の登場≫

そして、前の組の芝居が終わり、いよいよ有田・雪乃組の番になった。

CDから演目の「年増」の出だしの三味線が流れると、日本髪に薄いピンクの長襦袢姿の雪乃が大広間に登場し、踊り始めた。

  みやこの春に志賀山の、花見小袖の縫箔も…

「おいおい、いいじゃねえか」
「悔しいけれど、雪乃ちゃんには敵わないわ」

小鹿と久美子が雪乃の踊りに集中している隙に、有田は赤い天狗の面を被った。それは、有田の秘密兵器、パーティーグッズのネット通販サイトで見つけた、赤い天狗の半面マスクだ。
素材はコンドームと同じラテックスゴム。セールス文言にはパーティグッズらしく「口の部分が空いてますから、着用したままで飲食できます」とあった。だが、到着したものを開けてみると、ゴム臭くてとても被れない。何度も石鹸で洗ったら、ようやくゴム特有の臭いも、ベタベタも無くなった。被ると、顔にピッタリ。鼻は大きな天狗さま。

「これは使える!」と有田は確信していた。

  連れて着つれて、行く袖もたんだふれふれ六尺袖の…

「おい、有田、出番……な、なんだその面は」

小鹿が気がついた時は既に遅かった。有田は彼の脇をすり抜け、大広間の雪乃の後ろで踊り出していた。

「あいつ…」
「何を被っているのよ?」

見つめる観客からも不満の声が上がっていた。

「何だよ、般若の面なら雰囲気に合うけど、天狗じゃ、ぶち壊しですな」
「牛若丸じゃあるまいし」

その声は当然、小鹿にも届く。

「あの野郎、許さねえぞ」

手には太鼓のバチが握り締られていたが、二人が全裸になって絡み出すと、大広間の空気が変わってきた。
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