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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第6章 エロ芝居?それはないぜ
「今夜の客は全て資産家、それも飛び切りの部類だ。有田、お前は銀行員だら分ると思うが、使う金が一桁も二けたも違う。褒美をもらうため、頑張ってくれよな」
「頑張りますけど、顔は分らないようにちゃんと化粧してくれるんでしょうね?」
「ははは、それは心配ない。第一、お前のその面じゃあ、芝居がつまらねえ。ちゃんと化粧して、ちょんまげの鬘を着けてやるから、全くの別人だ」
「頼みますよ。バレたら大変なことになりますから」
「大丈夫だ。さあ、化粧し易いように、風呂で体を温めてこい」
小鹿はそう言ったが、有田は信用していなかった。鬘を着けようとも、どんなに化粧を施そうとも、目、鼻、口の形は変わらない。誰かに見破られるリスクがある。それだけじゃない。あの〝名器〟を相手にまともに挿入したら、1分も持ち堪えられない。「早漏!」と笑われるのは目に見えている。何か別の手立てを講じておかなければならない。
「おお、上がったか。米子(よねこ)さん、頼みます」
風呂から上がった有田を待ち構えていたのは小鹿が呼んだ舞台メーキャップ専門の田尻(たじり)米子だった。
「へえ、見事なもんだ」
「あら、ほんとう。これじゃあ、有田ちゃんだなんて誰も分らないわよ」
化粧を施し、有田がちょんまげの鬘を着けると、小鹿も久美子もしきりに感心していた。
「久美子、これなら、有田が雪乃とやっても焼き餅は焼かないだろう?」
「それは別よ。そんな場面は見ませんから!」
「ははは、そうか、見ないか。有田、お前は幸せ者だな。こんなに惚れられて、あははは」
すっかり支度を終えた雪乃も「え、有田ちゃんなの?」と驚いていた。