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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第7章 今度の相手は家元
≪裏の顔を知れ!≫

「何、浅丘流の踊りを教えてくれだと?バカかお前は。あれは正統派。俺たちのような座興踊りとは違うぞ」
「いえ、どうしても習いたいんです」

その夜、有田は一か八かの勝負、踊りで取引先の気を引きたいと小鹿に相談したが、予想通り、竹の棒で殴られてしまった。

「そんなこと言わないで下さいよ。銀行を追い出されるかどうかの瀬戸際なんですよ」
「知らねえよ、そんなものは」

小鹿はそっぽを向いたが、興味を持った雪乃が身を乗り出してきた。

「銀行を追い出されるって、どういうこと?」
「実は…」

有田が青い顔をしながら、今期の目標が日本舞踊「浅丘流」及び家元の浅丘正巳との取引獲得で、それができないとクビになりそうだと話をしていると、突然、パシーン!と竹の棒が頭に飛んできた。

「痛っ…」
「おい、もう一度言ってみろ」
「言ってみろじゃないですよ、いきなり」

頭を押さえる有田に、今度は小鹿が「つべこべ言うな!」と身を乗り出してきた。

「いったいどうしたんですか、浅丘流とお家元の浅丘正巳様と取引をしたいってことが」
「おっとと、それだよ、浅丘正巳。早く言えよ、取引先が浅丘流だと。これは面白いぞ」

小鹿はビールをグイッと飲み干すと、もう一度「これは面白い!」と笑い出した。有田と雪乃がきょとんとしていると、「お前たち、浅丘正巳の見ている前で踊ったんだよ」と言って、またもやビールをグイッと飲み干した。

「え、あの時?」
「そうだ、天狗踊りだ」

なんと、あの池袋の屋敷での踊りを見られてしまったのか……

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