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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第7章 今度の相手は家元
「だから嫌だって言ったんですよ。これじゃあ、お家元の前には出れませんよ。ああ、銀行員人生も終りです。責任取って下さいよ…」
不貞腐れた有田は小鹿からグラスをひったくると、中のビールをグイッと飲み干した。
「おい、やけになるな。これはチャンスだぞ」
「何がチャンスですか、冗談も休み休み言って下さい」
ふくれっ面の有田とは対照的に、小鹿は喜色満面、鼻歌を歌いながらブランデーと氷を用意してきた。
「お前たちはご褒美を頂いたんだぞ、あの気難しい浅丘正巳に」とご機嫌な小鹿に、「冗談はやめて下さいよ。あんな踊り、接待の場で出来ますか?」と仏頂面の有田が文句を言った瞬間、「だから、お前はバカなんだよ」と言うと同時に、パシーン!と竹の棒が飛んできた。
「痛っ…」
有田は頭を抱えるが、小鹿は「おい」とグラスを差し出しながら、「吉田社長の時、お前は接待の場で決め手となるセールスをしたか?」と問い掛けてきた。
「あ、いや…」
「久美子が仕掛け、俺とエロ坊主が仕上げた」
「それはそうですが…」
「裏の顔を知れってことだよ」
有田は小鹿が何を言いたいのか分らなかったが、ともかく、彼はご機嫌で、有田のグラスにブランデーを注いでいる。