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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第7章 今度の相手は家元
「しかし、頼みにいくにも手土産が必要だからな」
こう言ってニヤニヤしながらブランデーを飲む小鹿は有田のお尻を蹴飛ばし、顎で雪乃を指し示した。
あっ、そうか…有田は咄嗟にその場に土下座し、「お、お願いします!」と雪乃の足袋を掴んで迫ったが、さすが、雪乃だ。企みを察している。
「何よ、いやよ、変なことを考えているでしょう」と飲みかけのグラスをそこに置くと、襟元を押さえてじりじりと後ろに下がり出した。
「へへへ、有田もこうして頭を下げているんだから、縄秀にちょっと縛られてくれよ」
「何がちょっとよ。縄秀さんって、逆さ吊りが好きなことぐらい、私だって知ってるわよ」
雪乃にとってはいやな展開。逃げ出そうと、立ち上がったが、小鹿の方が一枚も二枚も上だった。
「そう怒るな」と帯に手を掛け、シュルッというそれを解いてしまった。
「あ、いや、もう、油断も隙もありゃしない……」
雪乃がぶつぶつ文句を言いながら、解かれた帯を拾い上げていると、今度は奥襟を掴んで後ろに下げ、雪乃の両手の自由を奪ってしまった。
「ダメよ、そんなこと」
着物の裾は乱れ、白い太腿が露になる。そして、襦袢の紐を解くと、雪乃を後ろ手に縛って、柱に括りつけてしまった。前がすっかり肌蹴てしまった雪乃は「やめて、堪忍して」と涙目で哀願している。
まるでSMビデオのワンシーンのようだ。有田がゴクッと唾を飲み込んでいると、パシーンと竹の棒が飛んできた。
「見とれているんじゃねえよ」
小鹿も雪乃も、叩かれた頭を押さえる有田を笑っている。即興芝居なのに本気になって見てしまった。まだまだ修行が足りない。
「よし、縄秀のところに行こう」
興が乗った小鹿はグラスを放り出した。