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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第7章 今度の相手は家元

「まあ、飲め」
「はあ」

有田は勧められたブランデーを一口口に含んだ。

「美味い」
「美味いだろう。これが浅丘正巳だ。お前のはビール、いや、水道の水だ」
「酷い喩だ」
「ははは、お前も一流になれば味が出てくるってことだ」

小鹿もブランデーを口にした。叩いても、叩かれてもアルコールが入れば、簡単に仲直り。雪乃は二人のやり取りを聞いて、クスクスと笑っていた。

「一流ってのは疲れるんだ」
「そうですか、金が儲かって嬉しいんじゃないですか?」
「違うな。一流ってのは、二流になってはいけないんだ。だから、そのプレッシャー、ストレスを解消するため、どこかで息抜きしたくなるもんだ。浅丘正巳もそうなんだよ。表向きはインテリだが、裏ではいろいろ遊んでいる。そうしないと、体も心ももたない」
「なるほど」

小鹿に納得させられた有田はお返しに小鹿のグラスにブランデーを注いだ。

「おお、ありがとう。だがな、あいつは俺のお客さんじゃないんだ。縄秀(なわひで)って名の縄師のお客なんだ」

小鹿は「すまんな」と言わんばかりに自分の後頭部をポンポンと叩いたが、雪乃が「縄秀って、あの人?」と食いついてきた。

「ほほう、知ってるのか。もっともエロの世界では有名人だからな」

縄師、別名、緊縛師と言えば、エロビデオではステテコ姿のしょぼくれた爺だが、一旦、麻縄を掴むと、あっと言う間に女を縛り上げ、あられもない姿にしてしまうエグい奴だ。

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