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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第8章 縄秀と看護師
≪俺にだって裏技はあるぞ!≫

「ところで、どんな用事かな?」

三人は小児科の診察室に通されていた。

「いや、まあ、ちょっとねえ」

場所が明るい診察室、しかも看護師が残っている。小鹿もさすがに口ごもってしまったが、「あら、先生、この方、黄疸の気がありませんか?」とその看護師、「風間(かざま)」という名札をつけた40代後半の女性は雪乃にまけず色っぽい、その彼女が有田の右手首を取って脈を取っている。

「直子(なおこ)ちゃん、そうか。うーん、気になるな。顔色が悪いな」
「先生、そうでしょう。脈が遅いんです」
「君、疲れやだるさは無いのか?」

銀行で副支店長と榎本課長に追い込まれ、小鹿のところに駆け込んできたほどだから、疲れていたのは当然だ。

「ええ、疲れてます。横になって眠りたいって言うのが正直な気持ちです」
「そうか。よし、風間さん、隣の処置室の用意を頼む」
「いや、先生、処置室って、僕はただ疲れているだけですよ」

思わぬ展開だが、小鹿はポンと雪乃のお尻を叩いた。

(おい、芝居が始まったよ)
(看護師さんも仲間なのね)

阿吽の呼吸、ニャッと笑った小鹿は早速その芝居に加わった。

「秀ちゃん、どうしたんだよ?有田は大丈夫か?」
「いや、なんとも言えない。とにかく診察してみないと。おい、君」
「は、私ですか?」
「そうだよ。名前は?」
「雪乃です」
「雪乃ちゃん、有田君の服を脱がしてあげなさい」

連鎖は繋がり、雪乃はスーツの上着に手を掛けた。
こうなると、「こいつら、仕組みやがったな」と有田も察したが、もう遅い。

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