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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第9章 難攻不落の浅丘流本部
「晴れてて良かった」
「ああ、そうだな」
縄秀と小鹿が世間話を始めたが、女たちの意地がぶつかり合う車内はどことなく緊張している。
「浅丘正巳はいくつだ?」
「52だったかな…まあ、いい男だからもてる。それに金がある、なのに結婚しない」
「秀ちゃんみたいだな」
「小鹿さんも同じじゃないか」
「俺はつまらぬ骨董屋のおやじだよ」
二人のバカ話に、久美子は堪えきれず「誰がいい男よ」と大きな声で笑い出してしまったが、雪乃と風間さんはニコリともしない。
「家元っていうのは大変らしいよ」
付き合いの深い縄秀がそう言うと、「なるほど」と小鹿が頷いていた。
そして、車が走り出して30分、マンションなどが建ち並ぶ一角を越えると、広大な林に覆われた豪邸が見えてきた。
「ここだよ」
「凄いわね」
「3,000坪はあるらしい」
春は花見会、夏には花火大会、秋はガーデンパーティが開かれるが、残念ながら有田の東西銀行はそれらに呼ばれたことがない。
車は「浅丘流総本部」と書かれた表札の掛かった門を通り抜けていった。