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置屋に生まれて
第3章 浮気

翌日から、殆ど毎日、明彦は増子のところに通い詰めた。

健康な16歳、有り余る精力は搾っても搾っても尽きることがなかった。増子も35歳。性欲の強い時だったから、余程のことがない限り、明彦の求めに応じていた。

だから、夏休みが終わる頃には、明彦の持続時間も長くなり、増子を逝かせてしまうことが多くなっていた。

しかし、「好事魔多し」と言うように、いい気になっているとバカなことをしてしまうものだ。

「今夜はダメなんよ」
「どうして?」
「ご贔屓はんに呼ばれて、お座敷、外せないんよ」

こういう時、明彦は置屋の息子だから、「仕方がないなあ」と聞き分けるものだが、その日は違っていた。学校の試験が終わり、性欲が溜まっていたので、「どうしてもダメなの?」となかなか諦めてくれず、増子を困らせていた。

「ねえ、顔を見るだけでもいいから・・」
「ほんまにダメなんよ」
「いいよ、分った。ケチ!」

明彦はむかっ腹を立てたまま電話を切ったが、それを聞いていた女がいた。

「明彦、何を怒っとるん?」
「あ、あれ、珠江さん・・」

彼女は近寄ってくると、ふぅーと息を吹き掛け、明彦はバツが悪かった。

「今ん電話、増子ちゃんやろ?」
「あ、いや・・」
「うち、知っとるんよ、あんたたちんこと」
「な、何のことですか・・」
「ふふふ、顔が赤くなっとる。正直やなあ・・」

珠江は増子より年上だが、細身で色気たっぷり、「枕芸者」をしていると噂される女、明彦を手玉に取ることなど、お手の物だった。
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