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レディー・マスケティアーズ
第10章 ポルトス&ダルタニァン ――パークサイド・パレス
*
「そんな大変なこと、どうしてもっと早く伝えてくれなかったのよ」
パークサイド・パレスの最上階の部屋では、パイプ詰まりの修理に来た作業員たち――銃士隊の隊員たち――を前に、ポルトスこと山岸彩也子が頬を膨らませたままだ。
「ごめんよ。機密保持のために電話やメールは使うなって、隊長の命令だったんだよ。それでも今の話で、だいたいのことはわかってくれたんじゃない? とにかく時間がないんだ。今言った計画の通り、おれたちはすぐにもセッティングにかかるから」
キャップを外した坂上が、ぺこぺこと頭を下げる。
「おれたちはここの仕掛けを終えたら、すぐに本部に戻る。心細いかもしれないけど、あとはポルトスの腕に任せるって。これも隊長からの伝言さ」
工藤が、その先を受け持った。
「わかったわよ」
すねた表情のまま、ポルトスがふんと頷いた。
「だけど、そこの人。その人は誰なのよ。さっきから何の挨拶もないけど、どこの誰?」
ポルトスは、キャップを目深にかぶったまま壁にもたれている三人目を指差した。
「海綿清掃」のマークが入っただぶだぶの作業服。黒いキャップのひさしで、顔の半分以上が隠れている。部屋に入ってからも立ったままで、まだ一言も言葉を発していない。
「こいつかい? 新顔だよ。いつか隊長が言っていた秘密兵器さ。隊長からは、今日の作戦指示はこの新顔から聞くようにって」