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レディー・マスケティアーズ
第10章 ポルトス&ダルタニァン ――パークサイド・パレス
*
「海綿清掃」の事務所では、そこにいる全員がスクリーン――遠く離れた「パークサイド・パレス」の一室で繰り広げられる狂宴――に釘付けになっていた。まったく、愚か者どもめ。いつまで続けるつもりだ。
ルルルルル。
吉岡の携帯から着信音が漏れたのは、そんな時だった。
「ああ、おれだ。何だと? 本当か? それはありがたい」
携帯を手に持ったまま、吉岡は老眼鏡を取り出し、分厚い手帳を広げた。
「なるほど、そうか。そうだったのか」
一回ずつ頷きながら、吉岡はちびた鉛筆で相手の話を手帳に書き留めている。
「よし、わかった。礼は弾むよ。これからアドレスを言うから、すぐそっちに画像を転送してくれ」
老眼鏡を外すと、吉岡はようやく携帯を切った。
「昔の仲間からだ」
「仲間って、警察ね」
アトスが念押しする。
「ああ。木庭敦子の素性がつかめた。コンサルタントと称して政界の大立者たちを手なずけている件で、桜田門もあの女を追っていたんだ」
ゲジゲジ眉毛をぴくつかせて、元刑事の吉岡がスクリーンの前に立った。
「画像が届きました」
坂上がキーボードを叩くと、いくらか古びた写真――この前に見たより何年も前のものらしい木庭敦子の写真――がスクリーンに拡大された。
腰のあたりまで伸ばした長い髪とヘアバンド。髪は白と黒がまだらになって、櫛を入れた様子もない。身につけているのは木綿地らしい白い一枚布のガウンで、縄のようなもので腰を縛っている。