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女忍者(くのいち)は誰かを好きになれるのか。
第1章 一里塚で
 小夜の左手はまだ自分の腿を探る男の腕を誘導していた。男の指先が小夜の身体の柔らかい部分を押し探られる。と、小夜は腰を左右によじり、内腿でその手を締めた。身体の中心が押される。
 
「おめえのここ、もう|泥濘《ぬかる》みみてえだよ。ったく助平な女だなあ。な、イイだろ。じゃあ、そろそろさあ」
 
 暗闇にトプ、トプっという水音が広がる。
 
「ああ、そんな……恥ずかしい」

 男の塊の根本から先端へと小夜は手のひらを滑らせ、その手を先端から根本へ再びたどった。カサカサと衣が擦れる音が暗闇に広がる。
 
「ああ」という熱を帯びたため息のあと水を求める池の鯉のようにピクリピクリと男の身体が弾け震える。時折、身体を弾けさせるのは男がそろそろ最後の時を迎えるという合図だ。絶頂を迎えるときに男が一番油断するということを小夜は知っていた。

(そろそろだ)
 
「もう、限界だ。では、そろそろ頂くよ」と、熱い吐息混じりの声と共に男の身体が覆い被さる。男の手が自分の着物の裾を捲った。腹まで伸びるくらいの赤黒く|熱《いき》り立った男性の塊がよだれを垂らした蛇のように小夜を睨みつけている。
 
「ああ、焦らないでください」

 小夜の指が男の裾を戻した。天狗の面のように男の裾が浮き上がっている。
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