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女忍者(くのいち)は誰かを好きになれるのか。
第1章 一里塚で
「しかし、おめえさん目に芯があって無愛想だが、それも味のうち……」と、男は小夜の背に腕を回し引き寄せた。股引の紐がすべて解かれると、それが腿のほうに降ろされる。はらりと腰巻が開けた。生温い風が小夜の臀を撫でる。

「ああ、私……恥ずかしい」
 
(忍者が自分の身をもって自分の身を守ることなど当然だ)
 
「ああ、濡れた赤貝がパックリといい眺めだよ。歌麿《うたまろ》の|画《え》より匂い立つようで、艶っぽいよ」と、男がため息混じりに囁く。
 
「ふふっ、だけど私、気持ちいいと……」
 
 小夜は腿を合わせた。
 再び手のひらで男の塊を包み込む。と、汗ばむそれはまるで生きているかのように強い脈動を感じた。
 
「えっ……ああ……そんなに気持ちいいのか。おめえも……」
 
 熱い男の塊が小夜の手のひらの中で最高に高調したようだった。

(あと一回、ビクっとなったら……)
 
「あ、ああ、堪らねえ。ううっ……」と言い終えるや否や男の身体がまな板の上の魚のようにビクビクと跳ねた。男の塊が小夜の手のひらの中でビクビクと跳ねた。

(今だっ)
 
 小夜は自分の手のひらに力を込めた。フラフラと揺れる男の小さな袋を。それはまるでクルミでも握り潰すかのようだった。
 
「ひっ、ぎゃあ! て、てめえ、なにするんでェ。ウグッ!」
 
 小夜が手で男の喉元を押し上げると、大きな身体が飛ぶようように彼女から離れた。
 
 ヒラリと松の枝に飛び移った。カサっと松の葉が揺れる。
 
「チッ、この|女《あま》っ、舐めやがって! 本当に叩っ斬ってやる」
 
 辛そうに腰をかがめ、頬を高潮させた男が松の下で左側の腰に手をかけ刀を抜く素振りをしてみせた。
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