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背徳 嫁と舅の淫望
第10章  淫望の彼方
 「だが、誰かが気づき、DNA鑑定を求めたらバレバレだ」
 「DNA鑑定か・・」
 「そんな薄氷を踏む思いで一生生きていくことになる」
 「お腹の子のことは身内以外の人には知られないことね。身内にも出来るだけ気づかれないようどこかで生きていきましょう」
 「そうするしかないだろう」
 「この子のためよ」
 「それ以上に、親の身勝手と叱られそうだ」

 「その十字架はわたしが背負います」
 「いや、二人だ」

 暫しの沈黙の後、哲司の手を握った彩香の目から一筋の涙が流れ落ちた。

 しばらくすると引越しのトラックが哲司の家の前に止まり、二人は永年住み慣れた町を去った。
 二人の引越し先を知るものは誰もいなかった。
 それどころか、突然の引越しに、近所の住民は気づきもしなかった。
 
 二人が引っ越してしばらくすると、工事用のトラックが来て、家は解体され、撤去された。
 家が取り壊されるのを見て、ようやくその家の住人が居なくなったことを知った者すらいた。

 更地に生えた雑草も枯れ、正月が過ぎると、また工事用のトラックが来て新しい家を建てはじめた。
 その家に、桜の花が咲き始めたころ、新しい住人が越してきた。

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