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もうLOVEっ!ハニー!
第7章 彼女の横顔
 電子音が鳴り響く。
 この春先にチャート一位を獲得したアイドルユニットのキャッチーなメロディが。
 村山薫はだるそうにベッドから起き上がり、片足だけ床に着けて手を伸ばし携帯を取る。
「もしもしー……?」
「ぶっ。寝起き丸出しじゃん、カオリン」
 長い横髪を耳に掛けながらカーテンを開く。
「柚?」
「でーす!」
 中学の吹奏楽部で他校交流があった時に意気投合した櫻井柚。
 卒業の時に一緒にカラオケオールした以来だ。
「どしたの?」
「カオリンっ結局どこ行ったのか教えてくんなかったじゃん、あの時。だからこうして私にだけ教えて貰おうって魂胆なわけよ」
「魂胆て……そんな単語知ってんの?」
「馬鹿にして―」
「してないけど」
 カレンダーを見る。
 今日は何の日だっけ。
 授業開始から一週間がもう経ったんだ。
 ああ、そうだ。
 生徒会オリエンテーションとか。
 部活紹介のやつだっけ。
 そこでやっと時計を見た。
 六時四十分。
 随分早くに電話してきたのね。
「聞いてるっ?」
「聴いてるよー。ねえ、柚」
「ん?」
「質問があるんだけどさ」
「なーに」
 黒い霧。
 何か、よくないことをしようとすると心に突然充満するガスみたいな。
 眼球が周りから黒くなっていくような。
 そんな、感覚がする。
 赤い唇を舐めて薫は尋ねた。
「よく話題に出してたバカんなって子のフルネームってさ……」
 陽光が差し込む華海都寮の一室。
 冴えわたっていく意識を更に鋭利に尖らせる一言が、薫の耳に響いた。

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