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もうLOVEっ!ハニー!
第7章 彼女の横顔
「おっはよー! かんなっ」
「おはようございます、美緒さん」
食堂で美弥のためにとっておいた席から鞄をずらす。
「んっもう、かんなったら本当彼女だよね」
隣で食べていた陸が冷たい声で云う。
「朝から無駄にハイテンションだな、一人宝塚」
「朝勃ちの消化不良かい、三陸?」
「やめろバカ」
何の話でしょうね。
朝食のサンドイッチにかぶりつきながら私は二人を交互に眺める。
陸の更に奥にはこばるとつばるが並んでいた。
ええ。
並んでいたんですよ。
特に会話もないですが、二人とも同じ方向を見つめて無言でもぐもぐと。
なんだかあれですね。
いいですね。
そこで私はつばるとの会話を思い出した。
「え?」
「聞いてなかったんですか? だから」
「そんなんで……いいのか」
つばるが訝しむように眉を潜める。
「中学の間、バカんなって呼ばなかったのは唯一貴方だけなんですよ。でもね、やっぱりちゃんと名前で呼んでもらいたいんです」
「何兄貴みたいなこと云ってんだよ」
「違いますよ?」
実の兄弟である過去にちゃんと向き合った早乙女こばるさん。
私は違います。
「新しい関係になりたいんです。真っ白なスタートから」
「は?」
ああ。
今、こう言おうとしましたね。
あんなことされて、お前は何を云ってるんだって。
ええ。
そうです。
バカなことは誰よりもわかってます。
「呼んでください」
「……え?」
「名前。呼んでください」
きっとそれが、その瞬間がバカんなが死ぬ瞬間。
でしょう?
つばるが口を押えながら目を泳がせる。
予期していなかったんだろう。
かんなのすべての言葉が予想外だったのだ。
「本当にそれで」
「さっさと!」
びくりと肩を震わせる。
「さっさと……呼べって言ってるんです」
何回驚いてるんですか。
つばるが決心したように手を口から離した。
「……かんな」
「はい」
「かんな」
確かめるように。
けれど私は自分の感覚にだけ集中していました。
古い自分が体から出ていくような喪失感と爽快感。
部屋から出るつばるはまだ何かいいたげだったが、扉はすぐに閉まった。