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もうLOVEっ!ハニー!
第7章 彼女の横顔

 このやろ……
「バカバカって何度もうっせーんですよ! 大体なんで医務室に私がいるってわかったんです!? 今度の嫌がらせはストーカーですか、手がこんでますねえっ」
 ダンッ。
 壁を殴った拳から微かな空気の波が生まれ髪が靡く。
「……うるせえ」
 中学の私が絶叫する。
 怖くない。
 怖くなんかないです。
 その眼も。
 その脅しも。
「なんで……なんで来たんですか」
「お前が部屋にいないから」
 そこで口をつぐみ目を逸らしたつばるに唖然としてしまう。
 なんですかそれ。
 まるで……
「私を、探し回ってたんですか。部屋にいなかっただけで?」
 この広い寮を。
「なんで」
「あ? お前がふらふらどっか行って先輩だとか誰かに襲われてんじゃねえかって思ったんだよ。案の定だったがな」
「だからなんで貴方がわざわざそんなこと……っ」
「あんな話聞いちまったら心配もするだろうが」
「あんな話? 峰先輩のことですか。馬鹿なのはそっちですよ……私をなんだと思ってるんです」
「何って……」
 唇を手の甲で拭う。
 あれ。
 どうして、私、こんなにも普通に話しているんでしょう。
 無理やりキスされたのに。
 隆人さんにはあんなに緊張したのに。
 ああ、そうか。

「私は貴方に何されてももう何も思いませんよ」

 つばるが固まる。
 そしてわずかに、片目を細めた。
 頬が痙攣したみたいに。
 ぴくっとだけ。
 ただそれだけなのに、私は酷く罪悪感に襲われたのでした。
「そうか」
「あの」
「悪い。逢引の途中だったんだろ」
 くっと悪い笑みを張りつめて。
 違う。
 こういう笑い方じゃない。
 早乙女つばるの笑みはもっと苛つく感じで……
 なんでそんなにも空しい笑い声を漏らすんですか。
「違うんです」
「あ?」
 去ろうとしたつばるを呼び止める。
 訂正しようとした私は、つばるの後ろに立つ人物に言葉を失った。
 私の視線につばるもそちらを向く。
 そして、同じ反応をした。
 けど、つばるの口は動くことが出来たようです。
「お前、なんでここに」
「随分と仲睦まじく痴話喧嘩してますね、お二人さん。柚から聞いてたのが嘘みたい」
 村山薫。
 いつから居たなんて、猫みたいに気配を消せる彼女には愚問ですかね。
 華海都寮一年の集合。
 そこには何の感慨もなく、気まずさが支配する。
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