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もうLOVEっ!ハニー!
第7章 彼女の横顔
「村山」
「薫でいいですよー。つばるって呼ぶんで」
 あと、と付け足すように呟いて私を一瞥する。
「バカんなさん?」
 こいつ。
 本当に嫌いです。
 猫という生き物も、それに似た人間も。
「こいつをそのあだ名で呼ぶな」
「あはっ。どの面下げて彼氏面だよ、元いじめっ子のヤリチン野郎」
「てめえ……」
 彼女に伸ばされそうになった腕にしがみつく。
 私の行動に相当驚いたようで、つばるは無言で私を見下ろした。
「駄目ですよ、簡単に挑発に乗ったりしないでください」
「馬鹿の割にその辺はわかるんだあ」
「わかりやすい性格ブスだな、お前」
 ぴくりと眉を上げて侮蔑をはねのける。
「あんたに言われたくないなあ、サドの変態さん。わざわざこの女追いかけて入寮なんて引くんだけど」
「何言ってんだ」
「何言ってるんです? つばるも私もお互い知らずにここに来たんですよ。大体つばるはこばるさんの」
 がっと口を塞がれる。
「それは言わなくていい」
「んんむ」
 薫が呆れたように、馬鹿にするように手を叩いて笑う。
 けらけらと。
 この笑い方、苦手です。
「あー、おもしろっ。あんたら超面白い。追い出すなんて勿体ないくらい」
「てめえさっきから何ほざいてんの」
「んー。なんでしょうねえ。彼女から聞いてないのかな、彼氏さん」
 初めて知りました。
 男性って怒りを堪えると腕まで血管が浮き出すんですね。
 見上げたつばるの眼から光が消えている。
「こんなうぜえ女は初めてだ」
「千人切り経験者でも抱く気もしない?」
「ああ」
「あはっ。光栄だわー」
 そこで心が酷く寒くなる。
 陸さんのことが浮かんだのです。
 こんな女にロックオンされてこの先大変ですね。
 この状況で考える私もやはり変人ですかね。
「私のストーカーのつばるの更にストーカーってことですか、超おもしれーですね」
「やめてよ。誰がこんなヤリチン」
「次言ったら殺す」
「はーい。気を付けまーす」
 大人。
 大人の存在が必要です、ここには。
 誰か来てくれませんかね。
 廊下の先は闇に沈み、日付を超えたこの夜中に離れまで上級生が来る確率は非常に低いと言わざるをえない。
 だから……
「ああー! やっとかんな発見!」
 美弥先輩の声が天使の声に聞こえたのです。
「出た、親衛隊」
 階段の踊り場から軽快に走って来る美弥に薫が毒づく。
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