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もうLOVEっ!ハニー!
第7章 彼女の横顔

 その瞬間意味ありげにアイコンタクトを交わしたつばるは、美弥の手から逃れて薫と同じ方向に歩いて行ってしまった。
 残された私に美弥が振り向かないまま尋ねる。
「本当になにもされてない?」
 冗談気のない声。
 だから私もなるべく声を震わせないように意識してしまった。
「はい、何も」
 そこでくるっと美弥がこちらに向き直る。
「なら良かったにー」

 医務室に戻ると鳴海がドアのところで待っていた。
 私と美弥を認識してすぐに手を振る。
「大丈夫だった? かんな」
「な、なんのことですか」
 鳴海の第一声で隆人とのことを思い出す。
 部屋の中からその本人も出てきたが、鳴海が無理やり後ろに追いやる。
「あんの酔っ払いに何か悪戯されてない? 本当にごめんねえ。私がちょっと手洗いに立ってる間にかんないなくなっちゃうからさ、心配で心配で。美弥もありがとね。探してきてくれて」
「お安い御用」
 びしっと敬礼を決めて。
「私は、その……」
「その?」
「別に、何もないですよ。早乙女つばるが話があるって医務室に来たので、それで出て行っただけです」
「ちょっと待って、なんでつばるがここに? しかも貴方他の生徒ならともかく、あの男に呼ばれて出て行くって」
「急用だったんですよ」
 ああ、誰も彼もしつこく質問を重ねないでください。
 どこまで私の本心かわからなくなってくるじゃないですか。
 鳴海がじっと私と眼を合わせる。
「本当ね?」
「はい」
 そこで安堵の息を吐き、鳴海が腰に手を当てた。
「あの管理人、酒癖だけが本当に悪いから気をつけてね。今度から絶対酔っ払いと二人きりになんてさせないから。何かあってからじゃ遅いからね」
「僕をそこまで犯罪者風に言うのやめてくれない?」
「まだ出てこないで、セクハラよ」
「セクハラですにー」
「セクハラですね」
「三人で言わないでよ」
 まださっき首元を撫でられた感触は残ってるし、隆人の顔をまっすぐには見られない。
 けれど、あのドキドキが今ではつばるに対してのものだったんじゃないかって曖昧になっていた。
 だから緊張はしていない。
 ずっと脳裏には「そうか」と呟いたつばるの淋しい口元がちらついていた。
「そろそろ解散しようか。夜更かしは肌の敵よね、特に美弥」
「ボクよりかんなを心配してよー」
 部屋に戻りながらも、なんだか胸騒ぎがとれませんでした。
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