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もうLOVEっ!ハニー!
第1章 生まれ変わり
 しかし慣れているのか、角を曲がっては階段を上り、また角を曲がり扉を抜けていると、足音は遠ざかって行った。
「撒いたかなー」
 のんびりと言う管理人さんは、少しだけ意地悪に笑いました。

 なんでしょう。
 やけに心臓がうるさいです。
 一気に静かになって、会ったばかりの方と二人きりで歩く。
 これだけのことで。
 繋いだ手は陸さんより頼りがいがあって。
「そうそう。僕のことは隆人でも柳でもいいから。好きに呼んでね」
「は……はい」
 ペタペタと。
 スリッパの音が響く。
 随分広い建物だと思ってしまう。
 あんなに駆け回ってもまた知らない場所に出る。
 もう一人ではさっきの場所には戻れないでしょう。
「今年は三人かな。新入生は」
「少ないですか」
「いや。例年は六、七人入るね。二年がさっきあの場にいた連中で。漆山陸。早乙女こばる。湯浅美弥……は三年か。立木奈己に遠藤亜季。それから久瀬尚哉と細峰ルカに手鞠賢がいる。覚えるのは大変だけど、全員変人だから嫌でも覚えるだろー。三年はあと五人。だから、あー……十五人くらいか。ここの住民は」
「私で十六人ですね」
 隆人が髪を耳にかけると、赤い痣がくっきりと見えた。
 三日月のような形。
 火傷でしょうか。
「そうだな。空き部屋も結構あるんだよ。勝手に秘密基地にしちまう奴等もいるいる。はあー……管理も楽じゃないよー? ちなみに大人は僕と医務室担当の女医さんの二人。正規寮と違って人員も割けないんだよね」
 私の視線に気づいたようです。
 長い指先で耳たぶをつまむ。
「これ気になる? 昔ちょっと付き合ってた女に噛まれたんだよ」
「ええっ?」
「半分冗談。まあ、過去の古傷って感じ」
 軽い口調だが、眼は重い。
「はい、ここです。どうした、その怪我は」
 やっぱり気づいてたのですね。
 顔を反射的に下げてしまう。
 するとすぐに顎に手をかけられ、無理に上げられる。
 目の前に隆人の顔。
「云うまで君をここに住まわせるわけにはいかないなー、って言ったらどうする?」
 意地悪な方です。
 にいっと笑って。
 空いた手でくるくると髪を弄りながら。
 余裕な大人。
 いつも卑怯です。
「……同級生にやられました」
「ふーん。最近の中坊って怖いね」
 ぱっと手を離して、また乱暴に頭を掻く。
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