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もうLOVEっ!ハニー!
第7章 彼女の横顔
「惜しかったな、つばる」
「うぜ……」
 三十五個で二位のつばるが悔しそうに睨む。
 だが、彼以上に殺気を放っていたのは美弥だった。
 焦りが災いして二十四個でギブアップしてしまった自分を恥じる。
「みなさん、お疲れ様です」
 麦茶を配り歩く私に美弥が飛びついた。
「かんなっごめんね! 魔の手から守れなくて!」
「ひゃっ? あ、美緒さんもお疲れ様です」
 尚哉がじとっとした眼でそれを見るが、すぐに岳斗の元に行った。
「先輩、二連覇おめでとうございます」
「くー、どした。珍しいんな」
「いえ、ただ……訊きたいことあって」
 麦茶を置いて岳斗が微笑む。
 その余裕につい萎縮してしまう自分が癪だった。
「やっぱ……かんな選ぶんすか?」
 普段全てにおいてやる気を見せない尚哉の真剣な声。
 岳斗は一瞬黙って、にこりと笑った。
「去年は俺、お前を選んだんやったな」
「思い出させないでください……あれから暫くマリケンとの間でも変な噂立てられたんすから」
「はははっ。くーはかわええからな」
「先輩」
 答えをはぐらかされているのを知り、語気を強める。
 隆人に渡された封筒をひらひら揺らし、岳斗は呟いた。
「……こんなんで終わったらおもろないけどな」
「え?」
 すたすたと横を抜けて去っていく岳斗の背中を追って見る。
 なんだ、今の。
 至極愉しそうな眼。
 去年俺をからかったときだってあんな眼じゃなかった。
 逞しい背中にぞくりとする。
 本気?
 あの、錦岳斗が?
 松園かんなに?
「くーちゃん、どした」
「マリケン……お疲れ。負けんなよ、お前……」
「焼肉食いすぎた」
 にかっと笑うマリケンの脚をげしげしと蹴る。
「いだいいだいって」
 くそ。
 苛つく。
 俺も出ればよかったなんて。
 バカみてえに。

 キャンプファイヤーが燃え尽き、解散ムードが漂う頃、鳴海がやってきた。
「はーい」
「なる先生……」
 ビールを片手に隣に座る。
 一本差し出そうとしてやめた。
「かんなはまだ飲まないわね」
「そうですね」
 気まずい沈黙。
 さっきから頭の中でごちゃごちゃ考えすぎて何を喋っていいかわからなくなっていたのです。
「ねえ、かんな」
「はい」
「岳斗はああ見えてもね、優しいから。安心していいと思うわよ」
 知ってるんだ。
 この人は。
「少なくともセクハラ野郎と早乙女よりはね」
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