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もうLOVEっ!ハニー!
第8章 優越鬼ごっこ
「先輩は……本当に亜季先輩のことが好きなんですね」
あれ。
あれれ。
なんでしょう。
この気持ち。
私……
奈己先輩を羨ましがってます。
「心から好きなんですね」
そんな存在があることを。
私はこれまで誰かを好きになったことがあったでしょう。
切ないほどに。
狂おしいほどに。
いいえ。
きっとない。
「好きですよ。所有したいほど」
「所有したい……?」
「ええ。誰にも触れさせたくない……ルカに目を向けることすら、思いを馳せるのでさえも許せない。僕だけを感じていてほしい。そんなことを思います」
「同じ部屋なんですよね」
「よく知っていますね。ええ……地獄とはまさにこの状況です。毎晩狂おしいほどに欲求を抑えて……ね」
「どうして……」
どうして?
そこまで人を好きになるのはどうして。
自然に口を突いて出た言葉。
それを奈己は笑い飛ばした。
穏やかに、
「理由などありません。何故人間は歩けるのか、それくらい理由などありません。ただ気づいたら歩けていたんで。ただ気づいたら……夢中になっていました」
「先輩方、私の学年で大人気ですよ」
「ふ……女の子にでしょう?」
「はい」
「興味がないわけじゃないんですがねぇ……かんなちゃんみたいに不思議な子も興味深いですし」
「私が?」
奈己がカーテンに手をかける。
暗くなりかけた世界をシャットアウトするように閉め出す。
私は立ち上がって電気を点けた。
白い蛍光灯に照らされた奈己は、少しだけ人間味を取り戻したようで。
どう言ったらいいのかわかりませんが。
逢う魔が時。
そのせいだったのでしょう。
「君は不思議な存在です。この寮には今までなかった……アイドル? 違いますね……うん、言うなれば王女かな」
「それ管理人にもなる先生にも言われました……」
「ああ……そりゃ大人の方が先に気づくでしょう」
「私はそんな存在じゃありませんよ」
「そう思う? 本気で?」
びくりと肩が上がる。
奈己が挑発するような声色を発したから。
「……どういう意味です」
指を差し出し、一本ずつ折り曲げながら呟く。
「早乙女つばる、こばる、漆山陸、久瀬尚哉、峰清龍、湯浅美弥。ガクに隆人管理人。あと何人気づいてる?」
「……」
何も言い返せません。
何を言えばいいでしょう。