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もうLOVEっ!ハニー!
第8章 優越鬼ごっこ
「かっんっなー!」
 はっと部屋の扉を開く。
 満面の笑みの美弥がそこにいた。
 奈己先輩と話してからどのくらい経ったのでしょうか。
 時計を確認すると、夜九時。
 大分時間が流れてます。
 何してたんでしょう、私。
「どうしましたか、美緒さん」
「んー。かんなに会いたくてね」
「良かったらどうぞ」
 部屋に招き入れる。
ー優越感はどう?ー
 びくりと手が止まってしまう。
 奈己先輩があの後言った言葉。
ーそれだけの人数に好かれている優越感はどう? 鬼ごっこみたいに気づかないふりして逃げ回ってー
「に? かんな、元気?」
「あっ、はい……」
 そうです。
 こういうとき美弥さんは目敏いのです。
「だーいじょーうぶ?」
「はい」
「かんな。ぎゅー」
 そう抱き締められる。
 体を包むように。
 細い手で。
 髪をすかれながら。
「……先輩」
「なぁに」
「先輩は……どうして私なんか好きになってくださるんですか」
 時が止まったような沈黙。
 ばかです。
 こんな質問。
 意味もなく。
 答えを求めているわけでもないのに。
 美弥が離れる。
「……なにかあった?」
「いえ……いいえ」
「ふぅん。かんなは、嘘が下手だね」
 笑いもせず。
「ボクはね、そんなとこもひっくるめてかんなが好きだよ」
 ああどうして……
 この方や奈己先輩は惜しげもなく感情を露にしてくださるのでしょう。
 なんだか泣きそうです。
 天井を見上げて涙を堪える。
「かんな」
「はい」
 美弥が鼻の触れそうな距離で囁く。
「……ちゅーしていい?」
 あまりに真剣に。
 あまりに間近で言うので、私は夢心地に頷いてしまいました。
 ふに、と唇が触れあう。
 目を瞑り、委ねてしまう。
 優しくて柔らかいキスに。
「ん……ふ」
 唇を舐めた舌が咥内に入ってくる。
 チュクリ。
 脳に音が響く。
 そこでハッとした。
 美弥を押し返す。
 互いに濡れた唇を同時に手で押さえた。
「私……私」
「……ごめん、かんな」
 美弥は一言残して扉を開き出ていった。
 ごめん。
 どうして。
 悪いのは私なのに。
 曖昧な私なのに。
 涙がぽろぽろ伝う。
 美弥さん……っ
 部屋は隣。
 なのに、追いかけられなかった。
 あの綺麗な顔が、罪悪で歪んだのは紛れもなく私のせいだから。
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