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もうLOVEっ!ハニー!
第9章 本性探し
「困ったな、そりゃ」
 あっけらかんと言ってこばるは教室に入ってしまう。
 尚哉はポカンとそれを見てからすぐに後に続いた。
 マリケンがまだ信じられないと言うような顔で付いてくる。
 担任が既に名簿片手に待機していた。
 だが、知ったことじゃない。
 こばるの横顔に問いかける。
 なんでだ?
 そんなもんか。
 陸なら違うだろうがよ。
 だって、お前もそうじゃないのかよ。
「久瀬ぇ。寝てんのか」
「います」
 担任のやる気ない点呼に応えて舌打ちする。
 ガク先輩が動いた。
 あの人はこういうときはグイグイいくだろう。
 じゃあ、俺は。
 教科書を取り出しながらぼんやり宙を見つめる。
 今まで彼女なんて考えたことすらない。
 付き合うなんて時間の無駄だと思っていた。
 二人ほどその理由で振った。
ー久瀬くんは誰かを必要としたことないんだねー
 捨て台詞みたいに。
 なんで今思い出すんだ。
「くー、授業終わったよ」
 はっとする。
 見上げるとびっしりと書かれた板書が消されていくところだった。
「マジか」
 マリケンがノートを差し出す。
「……ワリ」
「いいけどさあ。あのさ、悩みなら言って。くーはそう言うとき人頼らないから」
 腕組みをして自分の言葉に頷きながら。
 あれ。
 こいつってこんな心強い奴だっけ。
「……かんなちゃんのこと」
「別に俺は」
「このままだとガク先輩が既成事実作って奪ってくよ? あの人の強引さ知ってるからコテージの時も心配してたんじゃん?」
 たまに核心に衝いてくる。
 ヘッドホンを耳にかけながら、静かに告げられた。
「くーは格好良いんだから勝負すればいいのに」
 廊下に出ていく恰幅のいい背中を睨んで毒づく。
「そういう問題じゃないだろ……」
 いや、こう思うのが既にずれてるか。
 ああ、わかんねえし面倒臭い。
 さっさと誰か付き合ってしまえばいいのに。
 諦められるよう。
 そうだ。
 そう割りきれば楽なのに。
 教科書を抱えて頭を机にゴンと付けた。
「……何て返事すんだ?」
 生徒たちが出ていく中、不安だけが漂った。
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