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もうLOVEっ!ハニー!
第9章 本性探し
 こぽこぽと私のカップに注ぎ足して、先輩は揺れる波面の光を瞳に映して溜め息を吐いた。
「ねえ、誰を選ぶのかしら」
 天気でも尋ねるように。
 だから、なにも考えずに答えてしまっていた。
「美弥さんを選びたいのに……」
「あらあら。可哀想に」
「えっ、あ。なんの質問でしたか?」
 どうしてそう口に出たのかわからない。
 シャワー室での時間が甦ったのです。
 今朝のつばるよりも、ガク先輩よりも。
 あれれ。
 目頭が熱い。
 波が寄せるように涙が浮かんできて、力づくで止めようと眉を寄せる。
「貴女も苦しむんでしょうね」
「え?」
「私は、ベリがいれば楽だもの。本当に面倒で、人間臭くて、今の寮は鬱陶しいわ。貴女のせいで」
「ご、ごめんなさい」
 わけもわからず謝る。
「面白いから良いんだけどね。うふふ。ハッピーエンドを見せてちょうだいね」

 放課後、美弥さんのクラスを訪ねてみた。
 三年の廊下はなんだか世界が別のようで、受験に向けたピリッとした空気のなかに青春を意地でも味わおうとする執念が潜んでいて、空気が研ぎ澄まされていました。
 目当ての教室を覗く。
 最前列の窓際に見慣れた長髪の後ろ姿。
「美緒先輩」
 声が小さくて届かなかったようで、帰り支度をしつつ窓を見つめる美弥さんは反応しません。
「あれ? 松ちゃん。どうしたんですか」
 アルトの心地よい声。
「ルカ先輩、お邪魔してます」
 レンレンの所属モデル。
 五月号には巻頭特集が組まれていました。
 無表情に近い顔は感情を読み取れません。
「美緒先輩に用があるんですが」
「呼びますか? あ、でも手遅れでしたね」
 その意味が汲み取れず聞き返そうとしたとき、肩にぽんと大きな手が置かれました。
 振り向く前に誰かわかりました。
 大抵の寮の人は名前を呼びますから。
 無言で近づいてくるのは三人くらいです。
「……清龍さん」
「湯浅に相談だけはやめた方がいい」
 ハットがないと、普通の人みたいですね。

 学校から出て、少し縦に並んで歩く。
「ガク先輩と仲が良いんでしたね」
「お前、誰にも言ってないんだな」
「レイプされたこと言いふらす女はいないですよ。ガク先輩には話すと思いました?」
「告白したって聞いたから」
 砂を踏みにじって足を止める。
「……ええ。告白されたらそれも思い出さなきゃいけねーですかね?」
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