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もうLOVEっ!ハニー!
第9章 本性探し
夢を、見た気がします。
起きたときに、まるで長い時間冒険して悟ったかのような感覚に捕らわれたんです。
ああ、そうか。
私はまだ受け身なだけ。
反射することしかしない、それで逃げているだけなんだと。
数秒したら、何故そんなこと考えたのかすらわからなくなりましたが。
部屋を出て、朝食に向かおうと足を踏み出したところで全身がびくうっと飛び上がりそうになりました。
扉のすぐそばに美弥さんがいたから。
長い髪をフィッシュボーンにしてまとめて右肩に垂らし、艶やかな緑のシャツとジーンズ姿で。
待ってたんでしょうか。
「お、はようござ」
「ちょっと来て」
強引に遮られ、手を引かれる。
なに?
何ですか?
まだ夢の余韻も収まっていないのに。
ふわふわ。
どうしてどこに向かってる。
「美緒さんっ」
「ボクはかんなを信じたい」
「……え?」
顔が見えない美弥が何を考えているのかわからない。
ただ、早歩きで廊下をぐいぐい進む。
あ。
管理人の部屋だ。
隆人さんの。
「なんで」
カツン、と音を立てて立ち止まる。
美弥は無表情でこちらを見下ろした。
「ボクが訊きたい。なんで隆にいと抱き合ってたの?」
「なん……見てたんですか」
昨日の朝の話をしているんですね。
くらくら。
ふわふわ。
夢ならいいのに。
考えたくないことばかり。
「あれは」
「無理矢理じゃないよね? かんなも抱きついてたもんね。隆にいに」
「違うんです……あれは、泣いちゃったから」
「どうして?」
さっきから食い気味の言葉にむっとする。
「美弥さんに言う理由はありません」
ふっと肌に冷気が這った。
握られた腕に爪が立つ。
「いっ」
「……ボクがいないところでボク以外の奴に泣かされてそれに干渉しちゃいけないって言うの」
さっきの冷気が首筋を巻く。
息が、怖い。
その小さな吸い込む音でさえ、見えない怪物に聞き耳を立てられているようで。
「ねえ、かんな。これ以上待てないよ」
腕から手が上ってくる。
足を後ろに出そうとしたら、もう全身動けなくなっていた。
体が役目を放棄した。
首根を掴まれ、顔を引き寄せられる。
眼を瞑る間もなく唇を舐められた。
美しい眼がじっと見定めてくる。
いや、何かを計ってる?
こんなに怖いキスはなかった。
「ふぅ、っん」