この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
もうLOVEっ!ハニー!
第9章 本性探し
「委員会?」
椅子を引いて腰かける彼女に、なんとなく声をかけてみる。
髪を耳に掛けながら、首を振った。
「視聴覚室です」
教師が入ってきて、励音は前に向き直った。
「課題?」
「いえ……ちょっと気になることを調べて」
「あそこのPC規制厳しいからスマホのが早いんじゃないの?」
数学の教科書を探りながら言う。
「まあ、そうですね」
ならなんで、そんな難しい顔してんだ。
今はうっすらと桃色だが、教室の扉から入るときは真っ赤だったのもなぜだ。
考えるほど疑問が沸く。
この子の友達ってどんなだろうな。
何話すんだろ。
二言以上会話になんのかな。
つばるを除けば、おれくらいしか話してない気がする。
恭平は複雑な気持ちになりながら、真っ白の予習ページを開いた。
まずい。
忘れてた。
励音の足を蹴る。
振り向いた親友に、口パクで「問七の答えは?」
と伝えるが、返ってきた口パクが下手くそすぎて読み取れない。
「あ?」
だが、それ以上は教師に眼をつけられると思ったのか、励音は恭平を見捨てて前を向いた。
許さん。
ペラペラと教科書を遡り、公式を探す。
あ。
これきっかけになるじゃん。
隣の松園を見る。
「松園、予習のとこ見せてもらえない? やるの忘れてた」
小声で云うと、彼女はグッと口をつぐんだ。
視線を下ろし、教科書を盗み見ると、彼女も空白のままだったのだ。
力が抜けて鼻から息が漏れる。
「やってないの?」
「……動く点は嫌いです」
うわ。
初めて情報をゲットした。
数学苦手なんだ。
それだけで笑いそうになる。
あんなに謎めいて見えても、普通なんだな。
普通に予習忘れて、普通に数学が苦手で、普通に焦ってる。
二人で公式を求めて教科書を捲る。
なんか、楽しいな。
松園と同じ状況ってのが。
「あ、あった。これ」
トントン、とページ番号を叩いてやると、彼女ははにかんで小さく頭を下げた。
あれ。
なんか、時が止まったな一瞬。
励音が名指しされ、黒板に解答を書いている間も、頬杖をついてかんなの手元を眺めた。
細い指。
白くて、爪も薄くて綺麗で。
外見は本当にクラスでも高いと思うんだよな。
村山薫とは系統の違う、綺麗の方。
ああ。
これ、あれだ。
手遅れにならないうちに引いた方がいいやつだ。