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もうLOVEっ!ハニー!
第10章 甘い笑顔と花束

 うあ。
 歪んだ涙袋が心臓を揺さぶります。
「そういう意味じゃ……」
「お待たせいたしました」
 丁度現れた店員がグラスをテーブルに恭しく置く間、目線はがっちりと合わさる。
 手鞠賢先輩といつも静かに隅にいる先輩。
 こうして一対一になると、隠し持っていた深い感情の渦が見えてぞくぞくする。
 奈己先輩もそうでした。
 ピアノ室での会話は一言たりとも忘れられません。
「ガク先輩がさ、コクったらしいじゃん」
 店員が去った瞬間、先程までの温度を引きずり出すその神経。
 この人、怖さを潜ませてる。
 そんな気が這い上がってくる。
 先輩方のローテーションでの町案内のときはなかったはず。
 キャンプのときも。
 まるで、舌を隠していた蛇が初めて口を開いた。
 そんな。
「どうすんの」
 二人とも手をつけないグラスが水滴を伝わせる。
「……返事はまだ」
「へえ。ならまだ間に合うかな」
「え?」
 尚哉の手が突然私の両手に噛みついた。
 気配もなく。
 獲物を締め上げるように。
「俺、かんなの彼氏になりたい」
 捕らわれた手から熱が滲む。
 真剣な眼差し。
 つばるとも、ガク先輩とも、勿論美弥さんとも全く違う温度を秘めた瞳。
 脊髄が疼く。
「あ……あの……」
 ガク先輩と違って、逃げ道を用意なんてしてくれない。
 尚哉さんは黙って待っていた。

 返事を。

 答えを。

 今すぐ。

 猶予は、ない。

 唾を飲み込んで喉を潤す。
 それでも答えはまだ作られてない。
 握られた手だけは急かしてくる。
 どうしよう。
 どうすれば。
「なんで、私なんですか」
 時間稼ぎ。
 幼稚な手しか残されてないから。
 尚哉の手は離れない。
「わからない。歓迎会のとき、今まで見た女の誰とも似つかない雰囲気が気になった。キャンプのとき、枝拾い一緒にやったじゃん。居心地が良かった。会話の無理矢理も感じないし」
 どぎまぎとしてしまう。
 なんて素直に吐く人でしょうか。
 頬を染めることもなく。
「俺ね、女友達ってのが前いたんだ。同じアーティストが好きで、よく話してた。でもそいつが、卒業間際にコクって来たとき、それまでの完璧にハマってたナニかが崩れた。俺はそいつのこと、異性として見てなかったんだろうな。それ以来、マリケン以外つるまなくなった」
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