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もうLOVEっ!ハニー!
第10章 甘い笑顔と花束

 席についてから、アイスコーヒーを二つ注文する。
 勿論、何も訊かれてませんよ?
「あ、珈琲大丈夫だよね?」
「ええ、まあ」
 ミルクと砂糖が二人分あれば。
 小さな丸テーブルに向かい合う。
 店の奥に位置するここは、確かに入ってきた客からは死角となっていて、人目を気にせずに話すにはもってこいです。
 尚哉が膝を組んで、テーブルに右手を乗せる。
「とりあえず昼休みの奴、なに?」
 不機嫌そうに。
 普段からそうですが。
 私もテーブルに手を組んで唇を開く。
「同級生の御巫アリスという方です。尚哉さんの学年に御巫アンナって姉がいるらしいですが」
「……ちょっと待て」
 見るからに憔悴した尚哉が項垂れながら呟く。
「マジでいってんの?」
「え、えと。はい」
「嘘だろ……そいつに目つけられたってことか? くそ、ガク先輩だけで充分だろうがよ」
 なんでガク先輩の名前が出てきたかはノータッチでいきましょうか。
「ご存じですか」
「レンレンのモデルの細峰ルカっていただろ」
「あ、付きまとわれてるって聞きましたが」
「誰にだよ」
「えう、蘭先輩方に」
 鋭く突っ込まれてうなじがぞくりとしました。
 尚哉は目線をさ迷わせて、我を落ち着けるように、うなずいた。
 髪と同じ色の灰皿を引き寄せて、指で弄ぶ。
 眼鏡の向こうの眼は曇りっぱなしです。
「姫とも仲良いわけか……アリスにはなにもされてないわけ?」
「あー……ちょっと、です」
 尚哉は自分の唇をつまんで微笑んだ。
「舐められた、とか?」
「なんでわかるんですか!?」
「当てずっぽうだったんだけど」
 かあっと背中が熱くなる。
 この人、こんな余裕ある方でしたっけ。
 グレイの髪を手で弄りながら、灰皿を転がす。
「かんなはそっちの気あんの?」
「れ……」
「そ。レズっての?」
 喫茶店の空気が遠ざかり、密室で重苦しい空気の中話しているような錯覚に陥る。
 こめかみがピクピク痙攣してる。
「自覚はありま、せん」
「ふーん」
 焦点が行く当てをなくす。
 組んだ手がじわりと湿る。
「尚哉さん、は……ガク先輩と去年、コテージに泊まったって」
 ぴくりと上がった眉が静止する。
 尚哉は灰皿を音を立てて止めた。
「俺のこと、そういう目で見てる?」
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