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もうLOVEっ!ハニー!
第11章 写りこんだ隣の姫様

 ばーか。
 自分の罵り声が聞こえる。
 ざまーねえですよ。
 尻軽気取りですか。
 そんなことして他人傷つけて、それを判断材料に彼氏を決める?
 いつからそんな偉くなったんですかね。
 下唇を強く噛む。
 尚哉は目を閉じて、落ち着こうと息を深く繰り返した。
 それから手をこちらに向ける。
 何か、境界を作るように。
「……松園、かんな。俺は、昨日云ったはずだよな。別にセックスしたいわけじゃないんだって。何で、拒否したかわかるかわかんねえけど、好きだから、好きだから出来ないこともあるんだよ」
 口数の少ない尚哉が、己を抑えて言葉をまとめて不安定な声を発した。
 更に息を整える。
「もし、俺が、かんなを傷つけた男たちと同じに見えるんなら、どうにかしてでもそれを変えたいけど……今みたいなやり方でこられると……っ、キツい」
 私を不用意に刺激しない言葉を抽出して、抑えて、抑えて。
 あんなにも、軽はずみなことで。
 私の、せいで。
 無能な口は、まだ黙っている。
「もう一度言うけど、俺は性的に見てるつもりはない。今まで、誰かを恋愛対象として見たこともないんだ。だから、どう接して良いかわかんねえけど……さっきみたいのは、違うと思う……っあー、伝わらねえかな」
 今更後悔する馬鹿野郎。
 相手を真っ直ぐ見ることも叶わない。
 その時、脳裏には、つばるの言葉の本当の意味がパズルのピースのごとく当てはまった気がしていたのです。
 だから、あんなにも呆れて、怒ってた。
 今以上に。
「……尚哉さんは、優しいですね」
 ようやく出た一言もバカみたい。
「優しくなかったら、キスして襲ってたのか」
 頷くのは、罪に思えました。
 優しい、すらも時には侮辱となりうる。
「焦るなら、急がないでほしい。こんなやり方するなら、あっさりフって欲しい。こういうことしか出来ないなら、守ろうなんてお門違いかもな」
 どうされたかったんだろう。
 私。
 悩むのに疲れて、自暴自棄になって。
 関係ない優しい人を巻き込んで。
 諭されて。
 動かない手を両手で包まれる。
 尚哉が、そっと握っていた。
「うそ。撤回する。フってなんて欲しくない。本気で大事にしたいって思ってる。こんな風に、体に触れたくないし、無理矢理なんて絶対しないから」
 灰色の髪を垂らして、項垂れて。
 でもなぜか、頼れると思った。
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