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もうLOVEっ!ハニー!
第12章 騎士は王子と紙一重
甘くて冷たいジェラートが舌先でじわりと溶けて広がる。
舌の間をするりと唾液腺まで刺激する。
甘いですね。
バニラの香りは気管から鼻まで抜けていく。
「つばるは……行くんですか」
「あ?」
グラスに口を付けていたつばるが、音を立ててカウンターに置く。
「同窓会」
「行かねーよ」
「なんで」
「なんでって……」
コンコンと指でグラスを叩く。
眉を潜めて宙に答えを探すように目をきょろきょろさせて。
それから汐里さんが来ないか確かめるように奥に視線を這わせてから声を落とした。
「お前は俺がここに進学してきた意味分かってねえの?」
「意味……」
なんでしょうね。
兄であるこばるさんを追いかけてきたのではなかったですか。
すべての人脈を断ち切る華海都寮への進学。
私は……一度死ぬために。
あなたのせいで糞みたいな前世に甦らされましたけど。
「っ、だから……俺はもうあいつらに関わる気はねえんだよ」
「なんで」
「はあ?」
間髪入れずに発した疑問に一瞬怯む。
だって、だってそうでしょう。
王様のように君臨していたつばるが、何故あんなに居心地の良い場所から……
そうだ。
ちゃんと聞いてませんでした。
つばるがここに来た理由。
「つばるはどうしてここに来たんですか」
私はあまりに知らないんです。
ここにいる皆さんの事情を。
あんなにもフレンドリーなガク先輩が、陸先輩がいる理由も。
きっと聞いても理解できない。
だって、皆さん「普通」の中で生きていけそうだから。
最たるのはこの早乙女つばるだ。
私とは対極にいた存在。
みんなの中心で堂々と。
たった一つの動作で周りを支配して、パートナーにも友人にも困らずに。
「どうして?」
「お前……俺のことどう思ってた? 中学んとき」
「見境なく女子を食ってるボス猿みたいだなあと」
「……あのな」
正直に答えたつもりなんですがね。
それでも、あのハンカチの時は頭いかれたんじゃないかというくらい印象変わりましたが。
「猿ですよ。つばるは。男女関わりなく他を巻き込んで統率するくせに、人間らしく面倒なつながりまでには発展させない。野性的です。だから……何考えてるのかわからない。あの時は興味もありませんでした。私をいじめてる人たちの背後に気配だけはするなあって。それくらい」
それ程度。