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もうLOVEっ!ハニー!
第12章 騎士は王子と紙一重
もう二度と、あの空間に戻りたくはなかった。
阿呆みたいに平和なこの学園で、むかつく先輩たちと過ごしていられれば良いと。
日和ったことを考えていた。
本気で。
それが……あの薫って奴のせいで。
「つうわけで、二十八日の午後二時に迎えに行くからな。バカんなも準備させとけよ」
「ざけんな」
「マジマジ」
教室で話していた時よりも遠慮のない口調。
なんで出ちゃったんだよ、俺。
バカじゃね。
目を瞑り、口から息を吐く。
「楽しみにしてるぜ、つばるくん」
「しね」
「天国見ようぜー」
ブチっと一方的に切られた。
少し熱くなったスマホを額に付ける。
最悪だ。
くそが。
ごろんと窓の方に身を向ける。
暗闇のなかに学園のライトが浮かんでいる。
二時間前まで、かんなと一緒に食堂にいたなんて嘘にしか思えない。
かんな……
誰と付き合うんだなんて間抜けすぎる。
俺じゃないのだけは確かなのに。
嫉妬。
焦燥。
くそだせえ。
今すぐかんなを抱きたい。
弱い腰を掴んで、首筋を噛んでやりたい。
確かに感じて喘いでいたあの映像を思い出しては何回抜いたことか。
俺の名前を呼んで。
廊下から話し声がする。
湯浅がかんなを訪ねてるんだろう。
毎晩だ。
アリスのことはとりあえず安心した。
一難去ったら大災難が来やがった。
誰に相談する。
こういうときこそ年齢にものを言わせるべきだろう?
管理人か。
身長だけはある錦岳斗か。
兄貴にとりあえずメッセージ送るか。
いや、どうする。
カチカチと秒針が忙しなく鳴り進む。
どうする。
本人に話すとかはバカ丸だしだな。
「面倒臭ぇ……」
不規則に腕を上下してシーツを叩く。
顔にかかる微弱な風が少し気を紛らせてくれる。
今日は十六日。
あと十日弱。
どうにかして寮サークルの合宿でもブッキングさせてやれないか。
それこそ隆人頼みだ。
逃げるのか。
かつての友人から尻尾巻いて?
何がリーダーだよ。
中学で威勢放ってたクソガキが。
かんなの言葉が響いて更に落ち込む。
ボス猿はねえだろ。
あいつの言葉のセンスは怖いくらいだ。
言い得て妙。
「猿ねえ」
細い手足でズコズコ夢中でセックスしてたのは猿だっただろうがな。
腕を止め、緩く眠気に身を委ねる。
俺が解決しないと。