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もうLOVEっ!ハニー!
第12章 騎士は王子と紙一重
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掃除当番の票を一マス回して、日直の最後の仕事である日誌の提出に行こうとしていたところだった。
見るからにしょんぼりと歩く背中を見つけたのは。
「よっ」
「あ……」
美弥先輩と分かれて寮への足の重さに憂鬱が増していましたが、その笑顔に少しだけ晴れ渡る音がしました。
「ガク先輩」
「随分と避けられとったから、久しぶりやんな」
口をぎゅっと結んでしまう。
でも、責め立てるような語気はなかった。
黒い日誌をパタパタと扇ぎながら、上履きの踵を打ち付ける。
「日直ですか」
「そ。難儀なもん」
「あの先輩……」
「ん?」
先延ばしにしていたことが一気に脳裏に戻って来る。
尚哉先輩のこと、アリスのこと、一週間後に迫った同窓会のこと、ガク先輩の告白のこと。
眉の方に熱が昇ってくる。
どうしよう。
何から話せばいいのかわからない。
「どした?」
頭をぽんと撫でられ、肩からすっと緊張が抜け落ちる。
ああ、ガク先輩の手は暖かいです。
その優しい重みを感じながら顔を持ち上げる。
「聞きたいことがあるんですけど、いいですか」
「付き合うた彼女なら二人」
「い、意外に少ないですね」
ピースをしてさらっと言った岳斗に笑みが零れる。
「ははっ、ちゃうやろ?」
「あ……はい。その、今月末にですね、望まない来客が来るんです。寮に。私とつばるに恐らく用があって」
「何の話してるの?」
後ろから聞こえた声に二人同時に振り返る。
白衣がはたりと揺れて、見慣れたスリッパが床を擦る。
「えっあ、隆人さん?」
「珍しっ」
「行事の打ち合わせがあってね。ガク、日直お疲れ様」
日誌を指差した隆人が、その指先を私にずらす。
「さっきの話だけど、相談する人間違ってない?」
「そ、その」
確かに寮の管理人に相談するのが真っ当ですし、一番の解決策になるのはわかってるんですけど。
つばるが毛嫌いしているのがよぎって……
視界に影が入り、岳斗が目の前に立った。
「隆にいー、かんなが怯えてんで?」
「そうかな。それはごめんね」
背の高い岳斗が見下ろす形にはなるが、隆人の表情は余裕に満ちていた。
この人先輩方の間ではどんな存在なんでしょう。
「まあ一理あると思うけどな。かんな、さっきの話詳しく聞か……」
岳斗の目線が背中の方に向かっていく。
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