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もうLOVEっ!ハニー!
第13章 諸刃の剣で断ち切る思い出

 ノックをしようとした手が強ばっているのに気がついた。朝目が覚めた時からあまり考えないようにしてきたのに。
 過去からの追っ手が。
 新たな追っ手が今日ここに来る。
 つばるの話だと午後二時。
 一体何しに来るんだろう。
 どうしていじめてた人間を解放しないんだろう。
 もう視界に入ることは無いのに。
 なんで望んで会いに来るんだろう。

「代わりにノックしたげよっか?」
 驚いて息を吸い込んだ私を美弥が力無い笑みで包み込む。
 あのトイレの件から、本気で笑う明るい美弥さんを見ていません。
「だ、大丈夫です」
「悲しいにゃ。頼れるべきはこういうときは身体的に男たちだもんね」
 やれやれと首を振ってドアを軽快にノックする横顔に、今日の来客について知っていると書いてある。
「ごめんなさい……」
「そこで謝っちゃダぁメ。ボクが悲しくなるだけだよー? でもまあ、こばりんと隆にいを頼ったのは大正解だね。隆にいのアザ、やんちゃの証でしょ」
 え。
 女性にやられたって言ってませんでしたっけ。
 卑怯な大人は嘘つきなのかもしれない。
 ドアが開くと、戦闘態勢と言わんばかりに腕を捲り髪をバンドでまとめたこばるが顔を覗かせた。
 奥のベットを背もたれにするようにつばるが床に座っている。
「あれ。おはよう。美弥だけ?」
「それどゆこと。ボクだけじゃ計算外?」
「おはようございます。隆人さんが居ないらしくて何人かで探してるんです」
 わかりやすくつばるの顔が固まった。
「だってよ。つばる。お前の旧友時間守んねえな」
「そこまで躾けてねえよ」
 部屋に入り、真ん中に集まる。
 入口からは見えなかったが、これ見よがしに鉄バットがベッドの脇に三本備えられていた。
 暴力で解決ですかね。
 望まない来客は、暴力で追い返すんですかね。
 早乙女兄弟の思考がそこに読めた気がして、背中に緊張が走る。
「ああ、それ。丸腰で来る相手とは思えないから念のため野球部からくすんできただけ」
 あっけらかんと言うこばるに知らない一面を見る。
 美弥は苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、バットを手に取り緩く素振りをした。
「過去にかんなを泣かしたヤツは、これで、こう!」
 ブンッという低音につばるが眉をひそめた。
 貴方も対象ですもんね。
「それで時間守らないってどういうことですか」
 
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