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もうLOVEっ!ハニー!
第14章 思惑シャッフル

 寄せては返す無限の波。
 焦点がどこにあってるのかもわからず、その途方もなさをじっと見る。
 宇宙に思いを馳せなくても、海を見るだけでちっぽけな自分に気付かされる。
 風になびいた髪の毛が唇に当たったので退けようとすると、先に大きな手が髪を耳にかけた。
 手の主を見ようと顔を少し右に向けたところで、左の頬に温かみを感じて、手が添えられてるのだと気づいた時には唇が触れ合っていた。
 ざざん。
 ざざん、と寄せては返す。
 ふと離れたあとに笑いもせずに言いました。

「もいっかい、してもええ?」

 どうしてキスをしたのか、どうしてもう一度なのか、疑問は全て砂に消えて、頷いてしまう。
 だってあまりに優しく心地よくて。
 そこが外だと言うのも忘れて。
 もう一度あの感触をと求める自分しかいなくて。
 優しく重なった唇は、数秒互いの柔らかさに身を委ねて、惜しむように押し付け合ってから離れた。
 今度は世界が目に飛び込んできた。
 好奇の視線に、過ぎ行く人影。
 車の音にも胸が騒ぐ。
「あ、あの、ここ、人が沢山……」
「そやな。悪い。行こか」
 今すぐ逃げ出したい私の気持ちを汲み取って、大きな手は今度は手を包み込んで連れ出す。
 横断歩道の信号を待つ間、汗が滲んでもその手は固く握られていた。
「いやー……無かったことにしてほしないな」
 独り言のように呟くと、今度は私を見て続けた。
「好きや。やっぱ好き。可愛い。なんか見てまう。まだそんな気持ちにならんかもしれんけど、やっぱ付き合いたいわ」
 信号が青に変わる。
 でも足は動かない。
 カモメの声が降ってくる。
 足元からくすぐったいような感覚が這い上がる。
「私……先輩といると、本当にいつも笑って、楽しくて……だから、その」
 それを口にしていいのでしょうか。
 こんなに綺麗な人に自分をさらけ出していいのでしょうか。
 隣を歩く資格なんて。
 歓迎会の夜、シャワールームでの時間、尚哉さんの部屋での失態、全部が駆け巡る。
 受け入れてもらえるでしょうか。
 ぽんと背中を支えられて、信号を渡る。
 点滅しかけて足早に。
 見上げると、岳斗は顔を赤くして口元を押えていた。
「よお言うわ、俺も。何度も言う勇気なんかないで」
 あ、可愛い。
 先輩相手にそんな感情が湧くなんて。
 笑いが頬を持ち上げる。
「わろたな」
「はい」
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