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もうLOVEっ!ハニー!
第15章 何も叶えぬ流星群
夏休みが始まり、一週間。
先輩と三度目のデートです。
といっても図書館なのですが。
「学園の図書室は司と清がおるからなあ。移動もったいないけどごめんな」
バスで十五分ほどの場所にある市営図書館に到着。
学園の同級生に見つかる可能性もあるが、学習スペースで隣席なら問題ないだろう。
カードの登録を済ませる間、新刊小説コーナーを眺める岳斗をちらりと見る。
今日は紺色の七分丈のシャツに、黒のダメージジーンズ。
腿に数本傷が入っているだけなのに、なんだか目が惹かれてしまう。
自分はとガラス扉に目をやれば、ピンクゴールドのボタンが並んだストライプの薄桃の半袖シャツに、ベージュのチノパン、白のスニーカー。
見合ってるかな、とばかり考えてしまう。
「おまたせしました。それでは、次回からこちらのカードでお入りください」
「あ、はい。ありがとうございます」
名前の印字されたカードを受けとり、そそくさと新刊コーナーに向かう。
何を見ていたかと思えば、ドラマ化で話題の密室パニックゾンビ小説。
デスゲームで集められた七人が謎を解くごとに、メンバーが一人ずつゾンビ化していく話。
予告だけで仕入れた知識で、手に取る気も起きずにそっと岳斗の隣に並ぶ。
「おう、終わったん? 二階の学習室行こ」
「はい」
トントンと螺旋階段を上る。
明るい日差しがたっぷり天窓から入る学習室は、日向ぼっこ気分になりそうな暖かさ。
入口のホワイトボードに並んだ机の図を見て、使用するテーブル番号に使用中の緑のマグネットを貼る。
二席並んで空いていたのは左の端の後列で、入口に近いテーブル。
代わりにふたつ貼ってくれてから、手招きする。
「中はイヤホンは使えるから、好きに音楽聴いとき。後で何聴いてたか教えて」
「えっ、ラジオばっか聞いてますよ」
「じゃあカラオケは先の楽しみやな」
次のデートのための質問だったのかと赤面する。
何をバカ正直に答えてるのか。
くすくす笑う岳斗が開いたドアから入り、指定席に荷物を置く。
携帯とイヤホンを取り出し、夏休みの課題を広げて準備を進めていると、赤本とノートを開いた岳斗が一足先にペンを走らせていた。
流石、集中に切り替えるのが早い。
受験生の隣なのだという自覚を持って、宿題を片付けることに気合を入れました。